ゴブリンの兵長

ゴブリンが連れて来たのは、ゴブリンの兵長。だが、異様にかっこよくて右目に傷跡を刻んだ青年。俺達を少し見渡して口を開く。



「なんだ小ぶりん、ん? 貴様達は人間? なんの用があるんだ」

「話を簡略に言うと、アールズヘルムが石化病が蔓延してるって事だ。逃げて来たが、あいにく戻るまでの時間が無いから協力して欲しいんだ」

「石化病? あの、怪しい霧の事か、協力にしろ今や人界と協定は無い。悪いが帰って貰えないか?」

「そうは言っても、この霧はここまで来るには時間の問題だ。なんせ、魔王が目覚めっちまったからな」



ゴブリン兵士はピクッと眉を動かした、今や魔王がいない世界だ。失われた時代とも言えるが、十年前に目覚めて現在進行形だ。

そりゃ、信じ難い話だろう。



「魔王なんて滅んだんだろ? なぜ今更蘇る? 貴様ら人間が倒した。そう通告されていたはずだ。これが違うとなれば、各種族は臨時武装状態になるが――――貴様が言う根拠はなんだ? 魔王復活した狼煙でもあるのか?」



その問いに俺はこう低いトーンで答えた。



「十年前の人界で起きた話聞いているはずだ。その時に発生したのが"石化病"だ。魔王と霧はどんな繋がりあるかは分からない、けど、少なくても、この霧が現れたら魔王がいるんだ」




ゴブリン兵士はしばらく沈黙して、後ろを振り返りこう言った。



「もし、そうであれば。我々は何をすべきかを親方に話を通さなければ導けない。今は答えは出せない、すまないな人界の少年」



茂みの奥へ歩いていく、俺はそんな姿を見送り気絶してるソラを揺すり起こす。



「ふへへ、そんなにたべられないよぅ―」

「なんの夢見てるんだよ」



歪んだ笑に、俺はソラの頬を軽くつついた瞬間だった。



「はむ」



拍子抜けレベルで俺の指を食べてそのまま手全体を捕食した。



「うぉっ!? 俺の手を齧りやがった!? 離れろ!! 食べんなよ!!」

「ほひゅるもんうまひぃ」

「何言ってるかわんねぇ!! ってなんか外れないんだが!!?」



俺はブンブンと振り回して、数分ようやくスポンって抜けた。手はヨダレでズルズルだ。



「んにゅ?」



ソラは目を開けた、軽く背伸びする。

まるで寝起きの猫みたいな感じである。

こっちはヨダレでズルズルしてて気持ち悪いんだけどな。



「あれ? いつの間に森林に、あれここどこ?」

「アールズヘルムの町外れだ」

「あ、おはようです。えーと、これからどうするんですか?」



それは俺が知りたいことだが、まず武器を何とかしたいな。流石に拳で語るなんて脳筋過ぎるしな。



「こうゆう時は、通信機器だな。えーと」



リングから呼び覚ましたウィンドウ、久々に見たのだが――――いきなり着信マークが現れる。 魔力端末を一体化に成功したとはいえこれはこれで不信感しかない。

まぁいい、通話応答ボタンを押した。



「どこで何をやってたのよルーク!! どれだけ心配したと思ってるのよ!!」



いきなり耳を貫く声が響いた、さすがにソラのリアクションは"ぎょっ!?" っとしてる。

知らんそんな怒声を聞く為に通話応答した訳じゃない――――ポチ。



"通話が終了しました" っとウィンドウに表示された。因みにリング所有者しかウィンドウは見えないので持ってない人は、ソラの様になにしてんの? 的な表情である。



再び通話が来る、再び俺は応答ボタンを押した。



「ちょっと! 初見で怒声聞こえたからって通話切らないでよ!! そもそもね――――」




いや、聞きたくないや――――ポチ。




再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。


再び通話が来て、再び怒声、通話を切る。





―――――。いや、なにしてたっけ俺。

拒否しまくってて、相手の話内容が分からない。この後のオチは大体死亡フラグじゃないか?



俺は木々の狭間から空を見上げた、何やら人影が降下してくるのが見える。

それと何故か凄い少女の叫び声が近付いてくる。



「ルークのぉぉぉぉ――――バカァァァァァ―――――!!」



何故か俺に対する悪口は聞こえた、その直後辺りは冷気に包まれ凍った木々を切り裂き俺に向かって青い細剣を穿ち押し倒した。



「なんで拒否すんのよ!!バカルーク!!」

「久々でもないかフィリス、しかしまぁこんなプレイ好きなんだな」



押し倒された俺に跨り細剣を、顔の頬の傍を突き刺している。ふ、こんな大胆な事するとは成長したな。



「変態を串刺しして凍らせよう」

「いやいや、まてまて!!」

「何よバカ」

「バカって言うな!!」

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