平穏な時間

次の朝、いや、昼まで寝てしまった。

夜明けの曙まで起きていたからな。


布団からムクリと起き上がると、何やらいい匂いが鼻腔を突きぬけた。


テーブルの上には出来たての料理が見えた、俺はベッドから脚を降ろして立ち上がり歩く。皿の上に一枚の手紙が置かれており、手に取り書かれてる文を読む。



"勝手に入ってごめんなさい。コルネと一緒に料理する為にキッチン使わせてもらいました。口に合えばいいのですが。"


この寮は、キッチンと部屋が別々である。

分かりやすく言えば賃貸住宅の作りだ。

この敬語だとシルヴィアか。手料理かぁ、ルナ以外初めてだな。

異国料理だろう、美味そうだけど―――。



異質な香りと存在感を放つ食べ物? が置かれている。モザイクテケテケレベル、アレは食べ物なのか? いや、食べ物か。いやいやいやいやいやいやいやいや!!? 食べ物なわけないだろこれ!!? グロテスク過ぎて食欲が失せる!!



触手らしいのがバタバタする、不気味過ぎて何をこうさせたんだ!!?



俺は綺麗なオカズに箸を伸ばす、だが謎の触手は箸に絡む。



「き、貴様!? 食べ物なのに、自分より綺麗なのは食べさせないつもりか!!」



離れない、外れない、謎の触手は箸にたいする絡みが強すぎる。


「お困りの様ですねルーク」

「ユズ!? 今までどこに居たんだ?」


周りを見渡すが姿は無い。


「こっちです。こっち」


声の方に目線を向けると、テーブルの上に小さなユズがちょこんと手を挙げていた。


「ミニキャラユズ!? 何その果てしない可愛さ!!」

「ふふ、魅力に気付いたみたいで嬉しいですが。はて? ルークそんな巨人でした?」

「え? 自分の姿見てないの?」

「はい、やたら周りが大きくてコルネ私に気づかないですし、寂しですね」


小皿に水を張って、テーブルに置く。


「手鏡ないから、水面で自分の顔見る原理で一回見てみ」

「わかりました」


反射して自分の姿を見るユズは驚き、俺に何とかしてみたいな顔をしていた。



「な、なんなんですか!? 私が小さくなってるじゃないですか!!」

「まぁそうだな。見たまんまだけど」

「うぅ、ルークとあんなことやこんなことが出来なくなるのは嫌です」


そこでモジモジするなよ、可愛さの塊じゃんか!! てか、そんなシーンは俺が認めねぇ!!


「見る人にはえっちコンロ点火じゃんか。いいかもだが!! そんな作品じゃないこれ!!」


頬を膨らまして不満げにユズは言った。


「むー、私これだと不便なんです。戻るまでルークの傍に住みます」

「住むってどうやって?」

「服の襟とか? 頭の髪の毛に紛れるとか」

「コルネの魔力供給は?」

「そうですね、コルネの手を握ってください」

「へ?」

「そうしないと、ラブラブにならないでしょうしね」

「魔力供給じゃなくて、ラブラブ供給じゃないかそれ!!」

「コルネ最近変化ありましたから、何かあったのでは無いかと」

「何も無いから!! うん!! 何にもないから!!」



謎の触手を放置して、ルークはドアを開けて廊下を歩く。 授業中だから静かだ。

学園敷地内に繋がる扉を開けて、外へ出た。



復旧作業する人々でワイワイ、職人さん達が設計図を片手に指示。おばちゃん達は、食べ物を運んだり作ったりして交流場になってる。改めて見ると、今じゃ有り得ない光景だろう。平民と貴族達との間はズキズキしていた二週間前、それが今は互いに補えない部分を話し合って進めて一つの建造物になる。



ある意味嬉しいかもな、分かち合えればなんだって出来る。壁があるから出来なかった。

あの時、俺の力を解き放って間違いじゃなかったんだな。



「―――神殺し力は無いけど、今ならわかる。折れてなんかいられない、誰かを護れる力を今度こそ手にいれるんだ」

「ルーク?」

「だから、手を貸してくれないか? ユズに限らずさ。みんなが居てこその新たな力を」

「ふふ」

「なんだよ?」

「いや、前のルークなら絶対に言わないかっこいいセリフ言うなんて似合いませんよ」

「あ、あのなぁ―――」

「ルーク、貴方は一人じゃありません。例え幼なじみが違った道に踏み外しても、それを取り戻すはルークしかいません。けど、その役割は一人では何にもなりません、頼ってください私達仲間を」

「あの世界なら変人扱いだったのにな、今は違うな。あぁ、頼りにしてる」



その後、手伝いに参加した俺は周りから沢山の励ましを貰った。

夕暮れ時、寮に帰ると謎の触手を食べたであろう被害者が部屋の前で倒れていた。



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