大切な仲間と"存在"

呼び止められた俺、何処と無くコルネはいつもと雰囲気が違っていた。

いつもならツンっとしているが、今日は寂しそうな顔つきである。



「何処に行くつもりよ一人で」

「君には関係ない」

「みんな君のために、色んなことしてるんだよ?」

「頼んだ覚えはない」

「なんでそんな勝手なこと言うのよ。ねぇ、ルークどうしたのよ? 力奪われて、師匠とも言える人に裏切られたのはわかるよ? でも、いつまでそのままでいるのよ!!」

「――――」


俺はコルネの近くまで歩み寄りこう感情的に言い放つ。


「お前に何がわかるんだよ!! 俺は神をぶった斬る為に得られた力、この世界を救う為に長い月日を、待ち望んだ力を、一瞬にして無にされたんだぞ!! それを、それを―――利用されていた? ふざけんなよ、その気で全部救えたはずなんだよ。なんなんだよ、用済みって意味わかんねぇよ―――」



俺の目から雫が頬を伝わり落ちた。

ただ信頼して、ただ異世界転生して、何でもかんでも上手くいくって無双も最強もなれたって。けど、全部あいつに奪われた。

この先何があるんだ? 力がない雑魚が何が出来るんだ――――。



するとコルネは無言で俺を抱きしめた。



終始俺は驚いた、コルネがそんなことをするなんて思わないからだ。

コルネはゆっくりとこう口を開いて言った。



「そんな事を何週間もずっと苦しんで耐えていたのね。大丈夫、私が受け止めるから。だから、一人で抱え込まないで」



その言葉に、俺は泣いてしまった。

裏切られ事が何よりも辛かった。



どれぐらい時間すぎただろう、空は暗くて夜空の星々が煌めく。 ちょっとした階段に、コルネと共に身を寄せて座っていた。



「コルネ、そんな心配してたのか?」


「そ、そりゃね。ただ、ルークあまり自分の気持ちとか口にしないから。平気そうな顔してるけど、きっとそれは違うって感じていた」


「見抜かれてたか」


「私もそんな感じたもん、ルーク程じゃないけど父に最後に見放されて。悲しくても自分の気持ちを押さえ込んでね。ユズが居なかったらきっとルークみたいなままだったと思う」


「ユズは良い子だからなぁ、その時もこうして話聞いてたのか?」


「うん、何も言わず抱きしめてくれた。だから、幼い頃の私を思い重ねると、やっぱり見過ごせないわ」



「優しいんだな」

「な、なによ! いつも優しくないみたいな言い方するのよ!!」

「あはは、まぁありがとう。色々借りが出来たな」

「当然な事しただけよ。それに寂しかったしね(ごにょごにょ)」

「なに?」

「な、なんでもないわよ! と、とりあえず学園に戻ろ! ほら!」


コルネは立ち上がり俺に手を差し伸べる。

頬を赤くしてツンっとした顔である。

その手を掴み、俺は立ち上がった。しかし、手を握ったまま離さないコルネ。



「こ、コルネ?」

「が、学園まで握ったままね! こ、これはルークが逃げないようにするため! だ、だから勘違いしないでね!」

「寂しいならそれでいいんだけどな」

「う、うるさい! 余計なこと言うなら頬引っ張るからね!」

「はいはい」


久々に感じた人の温もり、これ程な安心材料はない。俺達はそのまま郊外を歩き、学園前に着く手前でコルネは手を離した。

そして、数段先に歩き後ろを振り返りこう言った。


「さぁ、行こ! 私達にしか出来ない事が沢山あるんだから!」


この日見た、コルネの笑みは今まで以上に華やかで綺麗だった。

青春の二文字は、衝突、友情、恋愛で合成されているかもしれない。



「静かね」

「そうだな」

「とりあえず解散かな」

「またあしたなコルネ」

「―――! うん! またあした!!」



コルネと寮前で別れた後、俺は探索する。

学園敷地内、人気は無い。

校舎内、明かりがなくてみんな寝静まっているのだろう。

屋上に俺は向かった、扉を開けて進むと―――あのの姿があった。



「やはり来ると思ってた。久しいの」

「お前は?! あの時の天使ちゃん」

「だぁぁぁぁ!! 何故じゃ!! 何故妾を天使と呼ぶのじゃ!!」

「いや、その翼が全て物語る。それに敵意あんま感じないからな」



殺す気ある割にはあの時――――。


『一度しか言わぬ、。妾は何故お主を知ってるか知りたいならそうするのじゃ』



戦闘中、脳に直接話しかけてくる奴がいるかよ。



「―――見てたぞ、龍騎。いや、今はルークかの」

「ご存知だったか、見ての通りさ。今の力は魔術の鉄鎖だけで後は何もない凡人だ」


ラグナロクは少しばかり笑みを浮かべていた。

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