失われた力と喪失感

落ち込み気味の俺に、コルネ達も感謝の意を伝えてくれた。学園の犠牲がなくなり、表彰したいぐらい賞賛されていた。


当然、貴族達も考え方を改めて一人一人手を取る――――スノープ校長が望んだ学園になりつつある。



だが、その代償はデカい事は学園一同は把握済みであった。なぜなら、あの空中で膨大な魔力を解き放った地点でルーク自身がやるはずがないっと誰もがそう思っていた。



仲間の為に"神殺し"を目覚めさせた、故にその力を狙う、いや、既にに利用されていた。それを責める人なんて誰一人いない。



力を失ったのならば、また使えるまで彼を支える。それがスノープ校長が全校生徒に伝えた発言だった。



だが、俺は心が晴れる事は無かった。

ただ、果てしない虚無感が満たされるだけだった。



「ルーク」

「ん?」

「これわかんないんだけど」


渡されたのは、なにかの写真集だ。

俺は空気が抜けた感じで、こう返した。



「そうだな、あまりいい感じじゃないね」

「え? え、えぇ。私もそう思う」



反応のうすさと、何時もの俺の会話が成り立たなすぎて反応に困ってる様だ。



校舎は半壊、建て直しする学生達はワイワイと賑わう学園敷地内。そんな道をとぼとぼ歩く。そんな時に不意に姿を表したのはバレット。



「ルーク、探したぞ」

「―――――」

「ちょっと付き合え」


バレットがそう言ってどっかに向かって歩く、後を追って歩くと郊外に出る。

そこで見たのは、紛れもなく貴族と平民が助け合いながら復旧している姿である。



「お前の行動が、皆を動きして考え方を改めた。最初は楯突く勢いだと、平民はお前を批判していた。だが、一年生おれたちが恐れも知らずに貴族の前に現れて救った命。平民も感銘受けた、お前の恐れ知らずの行動が身を結んだ。その結果が―――今、目の前で起きてる光景だ」



いい事をしたのだろう、けど、それは力あってこそなんだ。

こうして誰かの目の前にいる資格なんてない、鍛えられて神をただぶった斬る為に突き進んだ。それが今、神をぶった斬る力をなくした俺に何が出来るんだ?



そう自己犠牲が自問自答を繰り返している。


すると、スペルがこちらに気が付き近づいて来る。何かを物語る気迫がある。バレットは、睨む眼差しを向けていた。


「なんだその腑抜けた顔は? あの時、僕を止めといて、間違いを教えといて、なんなんだよそのは!!」

「スペル、ルークは以前の様に強くは無い。それに、精神的にも辛いだろ」

「知ったことか!! 貴様は、その程度で弱音吐くタイプじゃないだろ!! 僕を弄りまくっても気にしない、そんな姿が貴様だろうが!!」

「スペル!!」

「僕は認めないぞ、そんな弱い貴様を。―――くっ!!」



スペルは唇を噛み締めて、どっかに走って行った。バレットは無言で腕を組んで静かに口にした。


「わかってる、あの馬鹿がこんな腑抜け顔されて言いたくなるスペルの気持ちもな―――」



しばらくすると、シルヴィアが街並みから戻って来る。片手に紙袋を持っていた。



「バレットさんとルークさんこんにちは」

「うむ、買い出しだったか?」

「はい! ちょっと元気になってもらいたくて色々考えてみたんですよ。料理が一番かなって」

女子おなごから手料理とは、少々興味深いな」

「口に合うかは分かりませんけどね」

「ふむ、ならば荷物を持たせてくれぬか?」

「い、いいんですか?」

「構わぬ、市民に寄り添うのもオレの勤めだ」


二人は仲良くていい雰囲気である、気分を害する前に俺は離れよう――――。



人混みに紛れ込んで、俺は郊外を飛び出して街入口まで歩く。吹雪く雪道を眺めていた。

この雪のように、俺は凍てつく気持ちだ。



このまま、どっかに消えてもいいだろうな。



一歩前に踏み込んだ瞬間―――――。



「待ってルーク!!」



そんな叫び声が背後から飛んだ、振り返るとコルネの姿が目に止まる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る