謎のニワトリの正体

「ルーク、お前は騙されていた。だからこそ、俺が出るべきなんだろうな」



渋めの声、ニワトリ野郎と思っていた。

だが、違った。黒い肌の筋肉質の腕とグラサンを頭に置いた青年の姿だ。

空中を浮いている、ブラブラと俺は揺れていた。


「ちょっこら飛ぶから、歯を食いしばれ」



そう言った青年は一瞬でフィリスがいる場所まで飛び上がった。

数秒でフィリスの元に着く。青年はフィリスの間迎えに立ちゆっくりと口を開いた。



「フィリス、最初からそのつもりだったんだろ?」

「そうよ、傷付いた龍を治すには宿主が強くならなければ行けないからね。それより、貴方は何故私に従わなかったの?」

「従うつもりなんてないさ、俺は謎ニワトリだが本来は地底の。力を奪われた哀れな奴だったがな」

「ふふ、また奪えばいい話。私、今凄く楽しい。 ルークの消却的な顔がね」

「信頼させといて、最後には奪う。随分と強欲だねぇ」




鼻で笑うフィリスにアビスはこう言った。



「信頼? いやいや、たまたまいい素材だったから転生させただけ。しばらく離れていたのは、精神の強さを鍛える為。条件が揃ってようやく使、想定外もあったけどね」



アビスは少しばかり無言、そしてこう切り出した。



「憎しみに狩られて、女神になってもそれは変わらずのままか。復讐の為の力が"神殺し"だとしてもそれは間違いだ」

「何を言うかと思えば、偽善者かしら? 友を助ける為に踏み台は幾つもあった。それのなんの間違いかしら?」



フィリスはもはや耳を貸さない、その眼差しは強い敵意と殺意。

アビスは軽くため息を吐いて言う。



「神殺しに対になる存在、そいつがルークにあるとしたらお前は戦うつもりか」

「対になる存在?」

「知らないのか、神殺しと対になる存在"神喰い"だ。神を殺す者は強さは異常、だが、神喰いは暴食―――それは神殺しすらしのぐとも言われてる」

「それを今更知った所で、戦意喪失ルークは戦えない。今この場で君ら二人殺してもいいのよ?」

「冗談語るようになったな。悪いが簡単に死ぬつもりは無い、ルークはまた鍛えればお前なんか軽く超えちまう。そんな事も忘れたのか?」



ものつまらない顔を浮かべたフィリス、光る球体をただ眺めて一言。



「さて、君も消えて貰おうかしら?」



フィリスの深部に光る球体が入り、鋭い爪と硬い翼。見るからに龍と一体化したのだ。


「一体化も戦うのは悪くないけど、戦うにはまず舞台が必要。だから、しばらく消えてくれ」


アビスは指をパチンっと鳴らした。フィリスをどこかに転移させた。



「さて、ルークをどうするか―――」











―――騒動から二週間後―――











天井の広さがこれだけ広いと感じたことはなかった。授業の予鈴、部屋から出る気もない。そんな日々を、二日、三日と日を重ねて、気がつけば二週間引きこもっていた。



傷が癒えない、精神的にキツい。

なんで鍛えられたか、それは友人救う為と言ってもこんな酷いやり方があるのか。


脳裏に浮かぶのはフィリスの笑み、あんなロリっ子がそんな事するとは思えなかった。



信用して、信頼してたのが裏切られて力まで奪われて俺は――――。




目的を失った、神殺しでラグナロクを倒すはずだった。 一つの柱があるとしたら真っ二つに折れた、それが心だとしたら立ち直れない。



トントン


出るつもりは無い、今そんな気分じゃないんだ。俺はどうしたらいいんだ。



「鍵かかってるわ」

「ちょっとどけてくれ」

「ちょっとルクス!?」

「夜這いする為のキー」

「ちょ、ちょっと何を言ってるのよ!? そんなつもりないのに意識しちゃうじゃない!!」

「ふふ、コルネ隅に置けないね」

「違うんだから!! そんなんじゃないから!!」


ガチャッ



「開いた、男子の部屋に入る勇気。私にはない」

「ならなんで開けたのよ!!?」

「コルネの為に、あんたしかあいつを治せないでしょ?」

「それは、そうかもだけど」

「ルークは変態だが紳士でもある。手を出す真似はしない、童帝だからな」

「ぶふっ!!?」



廊下が騒がし過ぎるなぁ、俺逃げようか―――転移石で。


ポケットを触ると、なにやら背後に視線を感じた。



「ルーク、いつまでそうしてるんだ?」



渋い声、布団の中にいたんだけどいつからいたんだ!!?



「早く起きないと、聖なるアレがこれに」

「ぬぁぁぁぁぁ―――――!!」


俺は悲鳴を上げて布団から飛び跳ねるように出た。



「な、なんでお前がいるんだよ!!?」

「いやぁ? 召喚契約がルークに変わったんだよ。フィリスから切り離されたしな」

「とりあえず、仁王立ちやめてくれ」



























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