研究室へ

次の日、学校は休みである。

つまり自由に校内と郊外を歩ける。


そこで、俺はスノープ校長から貰った魔術書を開いてみた。古文書並に解読不可能な幾つかあるが、二ページ目に描かれていたイラストを見て理解する。


愛しの鉄鎖! あれ、黒鎖じゃないのかちょい残念だけど使えるならいい!!


俺はそこに書かれてる文を音読する。


「"鉄鎖"を使うには、身近にある鉄物と物質を変換させる火が必要。そして呼び出すと時は"チェーン"と言いましょう。って火は何だっていい系か」


とりあえずいらない鉄棒とキャンドルの火を用意する。そして――――。



「チェーン!!」



――――無音の空気――――



何がいけなかったんだ? 何が足りなかったんだ? 分からないけど、クソ恥ずかしい!!


改めて本を見ると、魔法陣みたいに描いた紙か床に描かないとダメらしい。なんともまぁ、古典的だなこれ。


とりあえずインクに着けたペン先でサラサラと紙に書いた。


「これならいいはず! チェーン!!」


鉄棒がぐにゃりと変形して鉄鎖が俺の手首に巻き付いた。なにこれかっけー!!

でもこれを扱うとしたら、どうやるんだ?



「―――拘束する束縛バインド


ジャラジャラと音を鳴らして、テーブルを無数の鉄鎖で拘束する。

異世界転生前に使ってた技である、問題なく使えたのでこれでた戦い方の幅が増えた。



トントン。



ドアノック、ゆっくりと歩きながらドアを開ける。メガネをして白衣を着てる小柄な少女が一人居た。なんかすごく眠そう。


「お前がルークか」

「そうだけど、君は誰だ?」

「知りたければ、研究室来てくれ。話はそれからだ」



とゆうわけで、その子の後を付いて行く事にした。場所分からないからな。



「なんで付いてくるんだ?」

「場所分からないからな」

「ふむ、ルークお前リング持ってないのか?」

「なにそれ? あ、プロポーズ?!」

「んなわけあるか!! 本来はお前からやるべきだろそれ!!」


「逆プロポーズってありだと思うんだよ。初対面でいきなりプロポーズされたかと思った」

「飛んだ勘違いだ!! 話戻すけど、その感じだともらってないな?」

「え? 貰うものだった!? この学園の人々みんなリア充だと!? 仲間ハズレは良くない!!」


「ルーク、お前ボケてるのかよく分からないけど科学者の私を疲れさせるとか愚問だぞ」

「まぁなんとなくこうしてるだけだから気にしたらキリないぞ」

「それお前が言うことなのか?」

「君が言うセリフ」

「セリフ取るな!!」



そんな感じで廊下を歩き、生徒専用入口を出て外は学園敷地内。多数施設あるが大体は部活とこの少女の実験室や技術室がある。

青白いフィールドが波打つ感じで百八十度学園敷地内を覆い尽くされてるな。


「凄いだろ? これが温度管理機だ。魔法の原理、魔力を含む鉱物を砕いたのが燃料となる」

「けどこれだと、維持させるのキツくないか? それに魔力の鉱物って使い切ればただの石になるだろ」

「愚問だな、この敷地内にある建物は全部魔力鉱物含んでる。年数にしたら千年程は維持可能だ」



この場所だけ千年も寒さ耐えられるとは、ほんと神だなって話だ。 しかしまぁ、機械と言う単語を聞く度に転生前を思い出す。


あちらの動力は電気とか燃料ガソリンとかだけど、こちらは魔力とか魔力鉱物と呼ばれる魔法の元素。簡単に言えば魔法の結晶体が魔法鉱物と呼ばれていて、それを専用機械で吸い上げて砂利みたく砕いてこの様な構造物に置き換えれば無限魔力みたいな感じだ。

とは言っても大体一年が寿命なのだが、特集なんだろうな。




「さて、さっさと行くぞ」

「あぁ」



噴水は凍結、地面は雪道で滑りそうになる。

歩くこと数分、研究室前に着いた。


「ここが研究室で、まぁ色々調べてる場所でもある。確か今年の一年生の分のリングは出来てるから皆に渡しといてくれ」

「構わないが、サテラに言わなくてもいいのか?」

「なぁに、彼奴は自由奔放な故に私達二年生でも旅芸人とか言われてるぐらいだ。めんどくさがり屋な同期が先生とか笑うなぁ」

「その通り過ぎてなん言えないな」

「さて、研究室は無許可で立ち入るのは禁止なんだ、だから待っててくれここで」

「了解」


少女は研究室の中に入る後ろ姿を見送る。

俺は振り返る近くのボードに目に止まり貼り紙を見る。



魔法最強防御壁のギル?


色あせた写真付き張り紙だった、赤い瞳にグレーな髪の色。凶悪そうな笑が印象的だ。

学園ここの人らしいが、凄くヤバい奴ってのは写真みてても感じてしまう。


ドンッ!


誰かがぶつかってきた、後ろを振り返ると気だるそうな少年。よく見ると写真と同一人物。



「邪魔だ、うせろ」

「すまん」


赤い眼差しは鈍く光る、明らかに人を何人も殺してる眼だ。フラフラしながら寮の方へ歩いていった。


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