四章神殺しの目覚め編

校長室の呼び出し

入学式の騒動から一週間、俺は校長室に呼びたされていた。理由は入学式に起きた事件の聴取ともう一つは―――。



「へ? ヨツンヘイム調査を依頼したい?」

「うむ、貴殿の強さは計り知れない。あの行動もそうじゃが、男子生徒を片手で飛ばすのは普通じゃ有り得ないのじゃ。つまり、君には実績があれば今後貴族と言う壁にぶち当たってたとしても、実力の実績があれば貴族はは向かえぬのじゃ」

「話はわかるけど、調査と貴族なんの関係があるんだ?」

「ふむ、その話をせねばならぬか。実を言うと貴族と言う建前でありながら、スペル君のような惨いことする様な人々が残念なことにいるのじゃ。それが君も感じている扱いじゃよ」


話はだいたい大筋に分かる、貴族だとしてもそれは表顔で裏は血が濡れてるって話になる。スノーブ校長は、一枚の書類を机の上に置いてこう語る。



「簡潔に言うとな、魔法省と言う組織がこのヨツンヘイムにある研究所を建設したのじゃよ。それが分からない、ただ分かるのは貴族が大量に資産を与えたことじゃよ」



書類を手に取る俺は、無言で書いてる字を眺める。 一千万コルから始まり最大で百億コル、十年前に研究施設が凍結するまでの話だった。俺が異世界転生する半年前の事みたいだが、多額金額は何に使われていたか確かに気になるな。


「ワシからは以上じゃ、なにか質問あるかの?」

「あるとすれば、調査依頼なら生徒会メンバーが最適じゃないのか?」

「ふむ、それがのう。生徒会メンバーは調査を拒むのじゃよ」

「なぜ?」

「ワシにも分からないから、君に頼んでるのじゃよ。主要都市での活躍は聞いておる」



俺は驚いたあの話を知ってる校長先生に、返す言葉を失う。



「実を言うとじゃな、君の父アルトは我が校の卒業生。親交があったのじゃよ、主要都市を作って貧困層を手助けして沢山の命を助けた。その功績で"英雄"なんて呼ばれていたのじゃよ。じゃが、まさかのう。ワシが想定していた事態より深刻じゃ、奴もまた殉教者を切り離した事。あの戦いでヘルヘイムへの道が開いてしまったのじゃ」



全てお見通しだった、そうヘルヘイム直通となった主要都市ミッドガル。

閉鎖された理由は悪魔がその土地を支配して、人に危害を与える事が現に起きたからだ。この十年で、人が凶暴化なんて話は数しれない。治安は悪くなる一方で、ラインハルトやシンシアやバーバラが自警団として見回りしている。まぁ全ての事件はヘルヘイムの悪魔が起こした一連だ。しかし、父がこの学園出身なんて聞いた事なかったな。



「考えとく、今はまだ何も考えられないから」

「了解じゃ、さて長話に付き合ってもらっだからには少しばかり待遇を与えようぞ」


ベルトから杖を引き抜き、華麗に振り回して机の上に二回叩いた。淡い光を放ち一つの本が現れた。


「この本は?」

「魔術書じゃ、ワシはもう使わぬから貴殿に授けよう」

「ありがとう」

「うむ」

「失礼しました」


校長室を出ると早速貴族スペルが待ち構えていた。松葉杖と右手足骨折、全治一ヶ月ぐらいだそうだ。


「貴様!! 何故ここに!!」

「呼ばれたのさ、それよりお前こそ何の用だよ?」

「僕は、君を退学する為に父上から書簡を届けに来たんだよ!!」

「ふーん」

「な、なんだよ!? 今だけだそ!! その顔でいられるのは!!」



震えてる指先を見て、俺は呆れ声で一言。


「ま、せいぜい頑張れよな」

「ぬぐぐぐっ!!」


スペルの悔しむ声を聞き流しながら俺は廊下を歩いた。やたら視線を感じるが気にしない。すると、目の前にあのバンダナ少年スパークが現れてこう口を開いた。



「人気もんは辛いな」

「皮肉かよ? パイセン」

「パイ? あぁ、あのパイか」

「うわぁ、変態だ」

「おいおい、勘違いすんなよ?! あれじゃねぇから。 少し話しないか? 」

「構わないが、壁ちら野郎も構わないか?」

「壁チラ?」

そこに居るんだろ?」


スティーグは壁からじとーっと俺を見る。いや可愛いが、男子だから間違うなよ。

手をピラピラと振るとか反則だな。


「あー、あいつか。お前可愛い女いるのか」

「女の子じゃないぞ」

「ん? いやそんなわけないだろ。あんな顔して男なら俺はバンジージャンプするぜ」



多分分からないのだろう、いや気持ちはわかるが。この容姿からしたらそうだろう。




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