平穏と犯罪者

木漏れ日を駆け抜ける二人、笑い声だけが響き合う。


日差しがいい場所には、緑の草原がまるで絨毯の様だ。ルークは寝っ転がる。


「いいなこうゆうのも」

「あー、なんかずるいそれ!」

「フィリスもやればいいじゃん」

「わ、私はいいわよスカートだし」

「勿体ないぞ?」

「うー、なんでそんな意地悪するのバカ!!」



見上げた空は青々しく、澄み渡る空気が美味しい。自然豊かとはまさにこれだ。


「本当、異世界なんだな」

「うん、この世界は神と人界が別々に暮す――――そんな世界が"ユグドラシル"よ」

「この世界に、ラグナロクがいるのか」

「居るけど、恐らく死の国ヘルヘイムかな」

「死の国?」

「その名のどおり、死者が徘徊する世界。冥界の女神が維持してるとかね」

「なるほどな」


視界にフィリスが映り込む、しゃがみこんでにっと笑みを浮かべる。


「ね、ルーク。冒険してみようよ」

「まだ早いし、それに"転生能力"どうなってんの?」

「今のよ」

「なるほど、大人の斧までか」

「私の魔法は最大に活かせるけど限度あるわ」

「冒険の足並みはまだ先だな」

「だねぇ」


フィリスはルークの隣に座って、草冠を作る

まぁこんな緩い時間久々だな、あちらの世界闇の塊みたいな世界だったしな。



「ハーフエルフ発見!」



俺は身体を起こし振り向くと一人の中年男性。武器を片手に不気味な笑みを浮かべていた、明らかに様子がおかしい人である。歯っ欠けジジイか。



「さぁ大人しくしろよぉ!!」



ルークとフィリスは顔を見合せた。



馬鹿が来た――――って、まぁ実力からしたら敵無しだからな。



俺は落ちている枝を拾い上げる、変質者の顔に枝を投げた。




ゴキャッ!!



「クリティカルヒット!」

「ぐあぁぁぁぁ――――!?」



フィリスは俺の背中に隠れて手に持つ枝に硬化魔法付与させていた。だから的中した時あんな鈍い音か。てか、鼻折れたか。



「鼻がァァァァ―――!!?」

「おじさん達、人身売買してる盗賊でしょ?」

「何故それを?!」



中年男性の目元にある刻印を指を向けたルークは「その三本の赤い刻印は"グルージャ"有名な犯罪者ギルドで、主に格下が人種売買する役割。その一人だろおっさん」



妙に詳しいが、まぁ村が警戒する程の犯罪者組織だからだ。

中年男性は口元をグイッと上げて笑いながら静かに言う。



「だが、知った所でどうなる? ってな」



突如現れた大柄の大男が、ルークの背後に現れ向かって刃を振りぬく。


「貰った!!」

「―――――」



ギィィィィィン!!



大男の渾身の一撃を、俺はたった一本ので防ぐ。



「ぬうっ!!?」

「お、おい!? どうした?」

!!」

「何言ってやがる? ガキ相手に力負けすんのか?!」



ギギギギッ――――!!



大男がフルパワーでも枝が折れず、ルークの持つ木の棒はぶれない。


「ぬぐぐっ!!」

「あら大人気ない、子供に力負けなんて」

「ぐっ!!? おい、子供ごときに負けるわけないだろ!? 相棒頑張れ!!」

「お、おうっ!!」



フィリスの煽りで力は増しているが、ルークには力には到底及ばない。


バキン!!っと大男の剣が折れてしまう。


「な、なにぃぃぃ!?」

「剣の方が耐えきれなかったわね」

「おい!? 何遊んでんだよ!!」

「くっ!! クソが!!」

「甘い」



ルークはくるりと周り、大男の懐に重い一撃を与えて吹き飛ばした。

とうぜん、鼻折れた男は唖然としていた。



「おじさん達、弱いなぁ」



震え声出しながら中年男性は言った。



「腕一番の怪力があっさり負けるだと? そんなわけない、だぞ?」

「おっさん、俺たちを普通なガキとしてみてるみたいだけど。その判断、間違ってる」

「ず、頭に乗るなよガキ! お前なんか、銃でイチコロなんだぞ!!」


懐から銃一本取り出す盗賊、震えた手が射程を狂わせている。


フッ―――!


そんなの見た俺は、木の枝を思いっきり投げ飛ばした。



「ガハハ!! そんな棒が俺に当たるわけ―――」


風を斬る音を奏でて、盗賊の今度は眉間にズゴッ!っと的中させた。

パタリと倒れた中年男性を見て俺とフィリスはハイタッチする。



すると「おーい!ルーク!」っと呼びながら親父が走って向かって来た。その背後から数名狩人が付いて来ていた。


「ここに一人でここにきちゃダメ――――って何があった!?」

「お父さん、この人たちに襲われた」

「襲われたのどっちかわかんねぇよルーク!?」

「おじさん」

「まんまじゃねぇかよ!!」


狩人が気絶する犯罪者達を見て、紐で腕を縛りどっかに連行した。

腕を組んでフィリスの方を向いて、優しい声で父は「ルークをよろしくなお嬢ちゃん」っと言った。


フィリスは満更でも無い顔で「分かりました」っと答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る