異世界転生

それからあれよとあれよで、十二時間経過。

俺の体は半透明になり、ガチめに透け始めていた。


マジで消えるのか俺、あれこれはこれで女湯を覗き込めるのでは?



ある意味昇天する―――。って誰が上手いこと言ってるんだっと内心ツッコミいれた。

さてフィリスは、自身が所有していた机に一枚の置き手紙を置いた。誰宛かは分からない。そうゆうことを俺は敢えて聞かずに、ただ、フィリスに一声。



「転生まで猶予がないぞフィリス」



そんな空気を無視してその姿を現すワイルドチキン。―――空気読め。



「空気嫁とはなんだ!? 俺は男好きじゃねぇよ!!」

「俺もだチキン!!」

「誰がチキンだ!!」


この日ばかりは、ワイルドチキンはキリッとした凛々しい顔付きである。―――ただの鳥なのだが。


「ただの鳥じゃねぇ!! ワイルドチキンだ!」

「いやまんまじゃん」

「澄ました顔で言うな!! お前とこうして話せるのが最後だと言うのにな!」

「へ?」


ワイルドチキンはただのワイルドチキンではなかった。元は喋るニワトリなんていない、フィリスが与えた魔力によって生命活動を維持しているのだ。―――意味する事は一つ。



「フィリスお前、転生するつもりか?」

「うん」

「いいのかよ? チキン死ぬぞ」

「私の居場所はからいいのよ。チキンは精霊みたいなものだから死なないわ」



そうならいいけど、そういやなぜニワトリが喋るのかとか、フィリスなしでも大丈夫な理由ってのが少しばかり引っかかる。



「さてと、転生準備っと――――」



フィリスの表情には曇らず迷いがない、気に止めるのは野蛮か? まぁいい俺は表情それを見てただただ、こう言った。



「そっか、なら転生後よろしくな」

「―――! それは当然よ!! 」

「あ、あとそれから―――」



龍騎の服袖を軽くフィリスの方に引っ張り、頬にキスをした。



「へ?」

「一応お礼、ありがとうね!」


フィリスは照れてるが、俺の脳内は非常事態が鳴り司令が浄化装置が起動する。

煩悩が煩悩を抑制――――出来るわけないだろうッ!



「り、龍騎?」

「安心しろただの、尊死なだけさ」



床に倒れた俺はこのまま―――召されてしまう。そんな気分が今来ているのだ。



「待って!? まだ異世界転生するの早いよ!!」

「おれは、ながいこと、きすなんて、なかった、ろりぃ、さいこうだろ」

「ヤバい!! なにか大事なセーブデータが破損したみたいな感じになってる!? ど、どうすれば止まるんだろう? そうだ」



フィリスは対策的に考えたのだろう、俺に抱きついてみた。

結果、俺の召され浄化スピードが早まった。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なんでよぉぉぉぉ!!? 喜ぶんじゃなくて消えていく方になるのよ!!?」

「ふ、乙πおっぱい、貧乳、我、悔いなし」

「なにか悟り開き始めちゃった!? な、殴ればいいのかな?」

「我の、ππππππππ貧乳板パイパイパイひんちちぺったんこは正義なり」

「んなっ!!!? この――――!!」



フィリス渾身の一撃が、龍騎の顔をめり込ませた。華麗に吹き飛ばされ壁にめり込み白い煙が立ち上った。いいパンチだ。



「はっ!? や、やり過ぎだわ。だ、大丈夫?」



何事無かったようにムクリと起き上がる俺は少しばかり嬉しかった。えむじゃねぇけどな。



「いたた。なぁ、フィリス出会った時より表情豊かになったな」

「べ、別にいいじゃない! ほら、異世界転生する為の"扉"開けるわよ!!」

「ま、待てよ!!」

「なによ?」

「転生したらまた会えるのか?」



「会えるよ、そんなランダムじゃないし。同じ村に生まれる設定にしたしね、あ、君のひかりって人はユグドラシルの何処かに居るわよ」

「何処かにか、的確には分からないのか」

「うん、龍騎が嫌う神が沢山いる世界だけどね」

「神嫌いなだけに神キラーか」

「それ面白くない」

「うっ」



フィリスは気を取り直して話す。



「まぁ同じ村か隣の村かで生まれ変わるだけだから安心してね」

「はいよ」

「さて行きましょうか」


歩いてそう遠くない距離にある一枚の木製扉の前に立ち止まる。眩しい光が扉の隙間から漏れ出ている――――。



「さ、逝こう。新たな冒険に――――」

「それは受けいれられないわよ」

「じゃこう!」

「えぇ!!」

「っとその前にこれをやるよ」


俺はポケットから取り出したのは、花の装飾そうしょくのヘアピンだった。

妹に渡すつもりだった奴だけど、まぁ会えないだろうしフィリスに似合いそうだしな。



「え?」

「目印代わりになるから。妹にあげるつもりだったけど、死んでしまったからやるよ」

「いいの本当に?」

「いいよ」



フィリスは俺の手の平からヘアピンを手に取り前髪に付けた。



「どう? 似合う?」

「普通に似合ってる、さっ行こうか」

「あっ、待ってよ!!」

「待たないよーだ」

「意地悪!!」



扉を開けた瞬間、強い光が包み込まれ目の前が眩んだ。


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