いざ出発
なんだかんだで、学園の入学前日を迎えた。
目をゆっくり開きベッドからむくりと起きあがり、黒いブーツに足を伸ばして履いてゆっくりと立ち上がる。
机の上に畳まれていたブレザーに、手を伸ばして袖を通す。
ふっ、ようやくこの時が来たな。
満足気に窓辺をチラリ、朝焼けが地平線から赤みを増している。軽く思い老ける。
十年経とうが経たまいが、結局は光の行方は掴めないままだ。そしてある問題が起きていた。――――それは、フィリスと会わないまま"五年経過"している。
まぁ気にしなくても大丈夫な奴だからな。
――――っと部屋の扉を開けてすぐに、ルナが目にとまり俺は驚く。
「ルナ!? びっくりさせないでくれよ!?」
「ねぇお兄ちゃん、なんでヨツンヘイムにある学園にしたの?」
なんでヨツンヘイムの学園を志願したかの理由、まずは自立したいのともう一つは強くなりたいからである。後は―――。
「魔力ないからなの?」
「まぁそうなるな、魔法が使えない人が行き着く学園だからな」
「お兄ちゃん、まだ間に合うよ。私が何とか言えばきっと入れるよ地元の学園に」
ルナはいつもと違い積極的だ、母親譲りの緑眼で俺を見つめている。セーラ服が似合う。
だが、俺は魔法が使えないし学力的にも付いていける自信が無い。ルナの気持ちだけを受け止めておこう。
「ありがとうなルナ、兄ちゃん嬉しいぞ」
「うにゅ」
「居ない間、母さんを頼むぞ」
「うん! 任せて!」
ルナの頭をなでなでしてから、ゆっくりと廊下を歩く。つんつんした子はどこへやら。
外へ出ると壁に何か置かれている。小包と二本の刀が置かれていた。
壁に貼り手紙あるな、誰からだろう?
手紙の封を開けると、中々荒々しい字で書かれていた。
『とある鍛冶屋でクビにされた理不尽な店員からお前に双剣をプレゼントさせてやった。運ぶまでに二日、作るのに五日。特殊錬金素材で作られたくそ重い武器だ、左が
送り主はあの鍛冶屋にいた元従業員。
なんだかんだで作りに行ったのか、割と話がわかるやつで良かった――――。
『追伸、てめぇのあのクソ重い武器を鍛えて使えるまでしばらく預かる。運ぶのに一ヶ月人件費百万コルだ半分払え』
そうでもなかった、前言撤回。
「払わない、払わない。払ったら負けだ」
まぁ、頼んでもなかったけど有難いから学生終わるまでは無理だな。その置き手紙をポケットにしまい二本の刀を持つ。
まだ多少軽いが、振るにはちょうどいい重さだ。
革製の鞘が二本あり、一つずつに革のベルトが施されている。吊るすにはいい作りで、鍛冶屋店員なだけある。一流だ。
左右の肩に革のベルトを吊るして鞘に二本の刀を背負う。準備は出来た、小包は母からの手料理だろう。
「ルーク」
遠くで俺を呼ぶ声、振り返ると母が手を振っていた。
「立派になって帰ってくるんだよ。 私の自慢の息子」
「あぁ! 誰も死なせないぐらい強くなって帰ってくるから!」
「期待してるわよ!」
「じゃ、行ってくる」
「いつでも帰っておいで、ルーク。 行ってらっしゃい」
母は笑みを浮かべて見送ってくれた、俺は手を振りながらゆっくりと村を離れた。
田舎村なだけに、森林の中にある道を歩く。目指す場所は――――。船乗り場。
補正された道筋を歩く、懐かしい木々を見渡しながら思い吹ける。
そういや、フィリスと戯れたり遊んだりしたのはこの森だな。今はもうそんな感じじゃないけどな。
フィリスは五年前に、この村から離れた。理由は魔力が制御出来なくなったのと、もう一つは――――。
"目的が見つかった"ねぇ。転生前は隠された謎だったけど、それが五年前に見つかった。なんだろうな。
俺でさえ分からない話だ。ただ、それが見つかってからと言うもののフィリスは、凍てつくように冷たい言葉ばかりになった。
考えても仕方がない、今のことを進む以外ないんだろう。
木々の間を進み、ようやく元"主要都市"ミッドガルが姿を現す。 手入れされておらず風化してボロボロな門、草木が城壁に絡み生えている。入口は封鎖されていて、錆び付いた鉄鎖と南京錠がある。
入ることすら許されない、ここはヘルヘイムと繋がっているんだ。父が殺されたこの街を通る度に俺は悔むんだ。 救えなかった事。
遺体も分からず情けないな本当――――。
俺は手を合わせて拝み、そのまま左側に足を向けて歩いた。後悔しても始まらない。
この先は海岸と繋がっていて海坊主が居た海と繋がっている。
ザザーザー
歩くこと約五分、海岸沿いに着いた。
砂浜は白く綺麗、波打ち際は白波が押し寄せたり引いたりする。空はカモメが鳴き、海だなって感じ始める―――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます