第7話 どうしてこうなった
どうしてこうなったのだろう。
昨日、
もしかして、それが原因か?
「ねぇ
頬を紅潮させて俺の家の前に立っていたのは、ツンデレ幼馴染でお馴染みの真希奈。
そしていつもなら絶対に言わないであろう言葉を放った。
あの真希奈が「一緒に登校しよう」……だと!? 有り得ない。熱でもあるのだろうか。もしくは今日は雪でも降るのだろうか(今の季節は春)。
「別にいいけど……お前大丈夫か?」
「なにが!?」
「いや、だっていつもは俺を置いて先に行っちゃうじゃないか」
「どうだっていいでしょ! 今日は一緒に行きたい気分なの!」
あ……有り得ない。本当にどうしたんだ?
熱でもあるのか? もしくは天変地異でも……(以下略)。
「ねぇ」
しばらく駅まで無言で歩いていると、急に真希奈が話しかけてきた。
「ん?」
「今日の昼……誰かと食べる予定ある?」
「……ないけど」
もしかして……。
「もしよかったらなんだけど、一緒に食べない……?」
大学生になってから今まで(約1ヶ月)真希奈とは一緒に学食へ行ったことは1度たりともない。
まさか……何か企んでいるのか?
そう結論付けるしかなかった。なぜなら昨日から明らかに様子がおかしいから。昨日家に帰ってから真希奈がツンデレな素振りを1度も見せていない。
(絶対におかしい……)
嫌な予感しかしないため、何がなんでも断ることに決める。
「嫌だって言ったら?」
「今日の夜ご飯はピーマンにする」
「ピーマンだけ!? 殺す気ですか!?」
「仕方がないから納豆も追加してあげる。ピーマンの納豆和えとか美味しそうだよね」
「真希奈さん!? 俺の嫌いな食べ物ランキング第2位が納豆なの知ってるよね!?」
「知らない」
「えぇ……」
正直夜ご飯がピーマンの納豆和えとかいう意味のわからない物になってほしくない。
だが真希奈の誘いを受ければ、罠にかかることは間違いないだろう。
どちらかを選ぶとすれば確実に後者の方がいいが……こいつ、絶対何か企んでるよなぁ。
「わかった。昼は一緒に食べよう」
「うん!」
色々思うところはあるが、昼食の約束を取り付けたところで最寄り駅に着き、2人並んで改札口を通る。
俺と真希奈は大学・学部・学科が同じなため、目的地も当然同じだ。それでも一緒に大学に行くのは初めて。
電車に乗ってから30分ほど揺られ、大学の最寄り駅に到着した。
「やっと着いたな。じゃ、また昼に〜」
「……ちょっと待って」
なるべく他の人たちに俺たちが一緒にいるのは見られたくない。真希奈もそう思ってるだろうと思い、駅に着いたところで一度解散しようとしたのだが……。
「はい?」
「一緒の講義取ってるんだし、一緒に行こうよ」
「……はい!?」
「なんで驚くのよ」
「いや、だって……」
真希奈は以前とは見違えるほどに素直になっている。素直になってくれるのは俺としても嬉しいけど、やっぱり調子狂うなぁ……。
「ほら、早く来ないと置いていくよ」
「お、おう」
結局それから真希奈には何も言えず、一緒に教室へと向かう羽目になったのだった。
教室にて…………どうしてこうなったのだろうか(再び)。
「おい真希奈」
「……なに?」
「どうしてそこに座ってるんだ……?」
とある教室の一角にて、いつもなら絶対に見られないであろう光景。
ただでさえ男女比率がおかしい理系学部の中で(男女比9:1)、男女が一緒に座っている光景はあまり見られない。なのになんで……どうして俺の隣に真希奈が座っているんだ!?
「どうしてって……別にいいじゃない」
「よくないわ! 周りからの視線と殺気がやばいじゃないか!」
「そんなんの気にしなければいいと思うけど?」
「確かに……って! 今日のお前どうしたんだよ! いつもなら絶対に有り得ないだろ!?」
明らかにおかしい、と指摘しても真希奈は知らんぷり。
どう吐かせようかと考えてみるが、後ろの扉から教授が入ってきてしまった。時間切れだ。
真希奈は勝った! と言わんばかりにこちらを向いて鼻を鳴らした。ちょっと腹立つ。
講義が終わったら絶対に吐かせてやると心に決め、颯爽と講義の準備を始めた。
講義が始まってからしばらくして、いつも通り集中して教授の話をメモに取っていると、隣に座っている真希奈から肩を軽く叩かれた。何かと思って隣に目を向けると、1枚のルーズリーフが渡される。
そのルーズリーフには丸く可愛らしい文字でこう書かれてあった。
『暇』
こいつ……本当に集中力皆無だよな。
とはいっても、暇そうにしている人は真希奈だけではない。周りを見れば寝ている人やスマホを触っている人、ペン回しで遊んでいる人もいる。
真面目に講義を受けているのは俺だけ……じゃないと思いたい。
しばらく真希奈から渡されたルーズリーフに書かれた『暇』という文字を見つめてから、その下に適当な文字を書き足していく。
『真面目に講義受けろ』
いつもなら集中して講義を聞いているのだが、今日は真希奈の邪魔のせいか全く講義に集中することができなかった。
真希奈との紙でのやり取りが新鮮で、もしかしたら楽しかったのかもしれない。
『え〜、だってつまらないじゃん』
『つまらなくても聞くんだよ』
我ながら真面目だと思うが、この文を見て真希奈がなぜかクスクスと笑った。
『やだ』
それからしばらく紙でのやり取りが続いたのは言うまでもない。
出会いが欲しくてマッチングアプリを始めたら、ツンデレ幼馴染が急にデレデレになった件 橘奏多 @kanata151015
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