正月に夏のノリをする馬鹿。(?)

「夏だ!」

「海だ!」

「夏祭りだー!」


「冬だし雪だし正月だよ。何が言いたいのか分からないよ。」


 嘉寿茂かずしげ駅から出てきた弥登を歓迎したのは、頭のおかしい事を言う七海だった。



 ・・・


 大晦日が過ぎて新たな一年が始まってから2日が過ぎて1月4日になった。


 あれから詩音と話し合い、4日に帰省する事を決めた後は後に不自由がないよう学校から出ている課題を終わらせたりと忙しかった為、詩音とはあれ以来あっていなかった。


 実家に帰省する日は一応駅で合流して向かう手筈だったが七海がそのまま詩音を連れて先に帰省をしたため急遽一人で帰省となった。


「…………」


 別段、実家に帰省することが嫌と言うわけではなかった。なんなら二ヶ月に一回の頻度で帰省する程であったりする。ならば何故悩んでいるのか。


「あったらどうしよう。」


 昔、どんな事に対しても無力だった自分は地位も権力も力も手に入れた。そんな自分が求めるのはただの平穏な日々。その為にも消すか潰すかしないといけないのだが。


「………まあいいや。あったら壊そう。」


 そんな言葉とは裏腹に答えは決まらず、電車の揺れに身を任せるのだった。




 ・・・



『次は嘉寿茂、嘉寿茂駅です。電車から降りる際にはお手持ちの荷物を……』



「………っ。ヤベ」


 いつの間にか寝ていた弥登は上からトランクケースを取り出し、電車を降りた。


「………切符っと」


 次の大掛かりな仕事のプロジェクトや過去の事。学校等のやらないといけない事が色々とあって困惑しそうになるが………


「お兄ちゃーーん!こっち雪積もってるよー!あっちで雪だるまも作ったからみてー!」

「……今いくよ。」


 楽しそうにはしゃぐ七海とを見て、今ぐらいは楽しむことに決めたのだった。



 ✶


「何で冬なのに夏のノリではしゃいでたんだよ。」

「逆張りをしていたい人生だからね!」

「何いってるんだコイツ。」

「お兄ちゃんも一緒にしない?逆張り」

「しないよ?」


 少し、七海の将来を心配する弥登だった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕が彼女を雇うまで ミコト @17832006

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ