第5話 元おじさん、本気を出す。
「えっと、それじゃあ今日のところはここで解散ということで。明日は朝10時にここにお願いします。」
篠山さんは、これから配信があるらしい。
絶対に見ないでと言われたが、やっぱり、気になるじゃん?
「了解。それじゃ、配信頑張って。」
俺は会社を出て、チャリで自宅まで帰った。
帰宅途中コンビニで酒を買って帰るか迷ったが、もう少しだけお預けにして、全部落ち着いたら呑もう。
「ただいま。」
家に帰った俺は、さっさとシャワーを浴びて篠山さんの配信を見ることにした。
「確か名前は……星降 涼子だったか。」
俺はパソコンでWeTubeを開き、星降 涼子と検索した。
時間的にちょうど配信が始まったところだ。
『こんばんは! 深夜のアイドル、星降 涼子だよ!』
俺はさっきまでとは違う篠山さんに驚いた。
これがネットの中の彼女なのか……。
「……すごい人気だな。」
画面の中の文字列では、次々にコメントが更新されていく。『こんばんは!』とか、『今日も可愛い!』だとか、愛に溢れたコメントが沢山あった。
「流石の人気だな。」
スパチャ? だったかな。それが沢山流れてきた。
すごい時代になったな……今じゃこれで稼げるんだから。
「そうえば、アンチがどうのこうの言ってたっけ。」
昨日、篠山さんがおじさんの俺に相談したこと。
彼女の心を限界まで追い詰めたもの。
だが、これを見る限りアンチコメントなんて流れてきていないが……。
「インターネットで検索してみるか。」
俺は、星降 涼子と検索した。俺は少し探っていると、まとめサイトと呼ばれるサイトを見つけた。
「……これのことか。」
そのサイトには、星降 涼子に関する悪口が書き込まれていた。正直、こちらとしても見ていて心地いいものでは無い。ここは、会社の喫煙所みたいなところだな。
「そりゃ、あんなにもなるわな。」
ここに書いてあるアンチコメントを見ると、精神的ダメージも大きいだろう。だからこそ、俺が支えてやらないといけない。
「……この教本くれたあいつには、感謝しておくか。」
俺は後輩から貰った教本で、コンピューターについて猛勉強した。デスクトップパソコンの構造や、各種ソフトの使い方、スペック別の使用用途など、ありとあらゆる知識を詰め込んだ。
「こんな勉強したのガキの頃以来だな……。」
それから俺は、インターネットを使ってネット用語について勉強した。正直、英語の勉強より難しかったな。今どきの若い子は、全てマスターしてるのか……。
「今の子はすごいな。」
どうして後輩があんなにパソコンの使い方を教えようとしていたのかわかった気がする。
俺は心の中で後輩に謝罪しながら、今後必要になりそうなものをネット通販で注文した。
「マネージャー業務についても調べておくか……。」
俺は多分、今まで一番パソコンを酷使しているだろう。後輩から譲ってもらったパソコンたから、大切に使いたいものだ。
「……そうえば、あのツインテちびもVTuberなのか?」
あの部屋は恐らく社員の仕事部屋だ。
あそこにいたということは、あのツインテちびもVTuberということだろう。
「ま、明日篠山さんに聞いてみるか……。」
それから俺は、マネージャーについて少し調べたあと、明日のことも考えて寝ることにした。
体は20代だが、心は50歳なので、夜更かしはつらい。
「明日から忙しくなるな……まずは篠山さんのメンタルケアからだな。」
俺は心の中で明日の予定を組みながら眠りについた。
久しぶりに本気で勉強して脳が疲れていたのか、いつもよりぐっすりと眠れた。
現代についていけてないおじさん、若返ってVTuber事務所に就職する。〜最近の若い子達にはついていけない!〜 楠 楓 @kadoka0929
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