窮狐猫を噛む 3-3
そして、ユキコは無防備を晒しているンマルに素早く接近していき、
「あら、どうかしましたか? 具合でも悪くなりましたか? それなら、私が
握りこぶしを相手の腹部に向けて衝突させていく。
ンマル@4は片目を閉じながら少し後方に吹き飛ばされていき、
「みゅぎゅぅぅ」
ユキコは口を大きく開けながら笑い、
「
「みゅぅぅ……」
「ほら、しっかりしなさい! 意識を保って!」
ユキコは優しい笑みを浮かべながら開いた手を自身の顔の横に振り上る。
そして、すさまじい速度で少しうずくまっているンマルの頬に向けて衝突させていった。
『パッツィーン!』
ンマルは苦痛の表情を浮かべ、顔を横に背けさせられながら、
「みゃっふゅ!」
円を描くように体を数回転させながら少し後方に後退していくンマル。
ユキコは嬉々とした表情を浮かべ、
「あら! 踊れる余裕が出るくらい元気になったのね! なら、今度はおやつの時間かな? さあ、遠慮せずに食べなさい!」
ユキコは衣服のポケットに手を突っ込み、何かをつかみ取ったら素早く引き抜く。
それから、抜き出された手の中には、直径三センチメートルほどの角が尖った小石が握りしめられていた。
そして、小石を握っていた手を思い切り後頭部の斜め後ろに振り上げ、ンマルに目掛けて振りかぶる。
小石は遅くはない速度で空中をまっすぐ飛んでいった。
それから、小石に続くかのようにユキコもンマルの方向に向かって宙を移動していく。
一方、ンマルは宙で体勢を立て直したらその場にとどまり、鋭い目つきをユキコに向け、
「そんなの、いらない!」
飛んできた小さな物体に向けて、かぎ爪と一緒に右足を左方向に
すると、かぎ爪の刃部分が小石と衝突し、小石を弾き飛ばしていった。
小石はそのまま何かに衝突することもなく緩やかに宙を進んでいき、宇宙に落下していく。
そして、ンマルの近くまで迫ったユキコは両手を前方に突き出しながら、
「燃え尽きろおぉぉ!!」
【
一方、ンマルは怒りに満ちた顔を浮かべ、
「その邪悪な心、ボクが真っ二つにしてあげるよ!」
【グラビティムーン:チョキ 再使用時間@十二時間】
ユキコの手から放たれた、人一人は容易に包み込める大きさの炎がンマルを襲い掛かる。
しかし、ンマルは何事もなかったように体を後転させていく。
ユキコは不安そうな表情を浮かべ、体を硬直させながら、
(しまった! 三すくみが発動した! 動けない!)
(ミャッ!? この人の攻撃を全身で受け止めちゃうかと思ったけど、何もなかった!? 三すくみが決まった? つまり、相手に大きな損傷を与えられる?)
ンマルの月を描くようなかぎ爪の軌道はユキコの腹部から顎まで
ユキコ@2は顔を歪ませながら体をのけぞらせ、空にたゆたう。
ンマルは険しい表情を作り出し、無防備のユキコに接近していき、
「あれ、こんな時に居眠りですか? もう、仕方ないなぁ、ボクが叩き起こしてあげるよ!」
しかし、メグムが困惑の表情を見せながらユキコとンマルの間に入っていく。
そして、ンマルに向けて両手を広げて立ちふさがり、
「待って、待ってくれ! もういいだろ、これ以上危害を加えるのはやめようよ」
「どうして!? そいつはメグムのことを襲おうとしてたんだよ!?」
「分かってる、分かってる、けどっ!」
「……自分でやる?」
「それもない!」
ユキコは不敵な笑みを浮かべながら、
「そんなのんきにしゃべってていいの? その隙を狙って不意打ちを仕掛けちゃうよ?」
ンマルは尻尾を上下に揺らして強張った笑みを作り、頬をかきながら、
「うーん、本当にそうするつもりだったら、思いを打ち明ける前にこっそり実行しないかな? つまり、もう負けを受け入れてるんじゃない?」
「違うっ! 私は、私は諦めてない! お前たちをすぐにでも負かしてやる!」
「ボクには、敵意を感じない相手に攻撃を仕掛ける意味を見出せないよ」
肩をすくめながら、優しく微笑むンマル。
一方、ユキコは険しい表情を作り出し、歯を食いしばりながら二人の顔を交互に睨みつけ続けた。
メグムは警戒心を持って緊張感を漂わせているけれど、どこか悲しい表情をユキコに向けている。
それから、三人はしばらくの間沈黙を貫き、周囲は静寂に包まれていく。
でも時々、野生動物の声が遠くから無音の空間を破ってくることもあった。
ユキコは目の端から
「私だって、私たちだってっ……」
ユキコは顔をしかめ、すぐに寂しそうな目で少し小さくなったニシイワヒメを見つめる。
それから体を反転させ、うなだれながらはるか遠くの宙に向かって遠ざかっていった。
ンマルは口の両端に手を添えながら語気を強め、
「もう悪いことなんて考えちゃダメだよー!」
静かな空間にンマルの綺麗な声が響き渡っていく。
メグムは小首をかしげながらユキコの小さな後ろ姿を見つめ、
(ん、ユキコ……さんは一体どこに向かっていくんだろう?)
ンマルはメグムから少し離れた場所から明るい笑顔を作りながら大きく手を振り、
「メグムー! 危ないから早く帰るよー!」
「うん、分かってるって!」
メグムは軽く手をあげながらンマルの近くに寄っていく。
そして、二人は横に並びながらニシイワヒメに戻っていった。
小麦色をした美しい使い !~よたみてい書 @kaitemitayo
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