人気のない場所で密会した後は…… 3-1

 後日、メグムが家でくつろいでいると、玄関がなにか軽い物がぶつけられている音を響かせていく。


『コンコン』


 メグムはうつむいていた顔を上げ、玄関にうつろな目を向けていく。


 そして、気だるそうに玄関を開けていくと、外には軽く手を上げているユキコの姿があった。


 メグムは目を見開きながら後ずさりし、


「ユキコさん!? どうしたんですか!? というか、なんで俺の家――」


「メグムさん。よかったら、一緒にお出かけしませんか?」


「えっ、お出かけですか? それは別に構いませんけど、どこへ?」


「電気網の外。町の外」


「ニシイワヒメの外に? いったいどうして?」


「メグムさんと狩りがしたいなぁって」


「え、俺とですか? 俺、狩りは得意じゃないんですけど」


「ふふ、大丈夫。簡単な獲物を狙うから」


 二人はメグムの家から離れ、町の中を横断して東門に向かっていく。

 そして、町を囲む電気網をくぐりぬけていき、静寂に包まれている外に出ていった。






 数分後、メグムはユキコの後姿に追いかけ続けていき、ニシイワヒメからある程度離れた宙を移動していた。

 

 また、空中を泳いでいた小魚はメグムとユキコの近くを通り過ぎながら、


(今日も収穫が少なかったなぁ)


 メグムは心配そうに周囲を見渡しながら、


「ユキコさん、さすがにちょっと町から離れ過ぎじゃないですか? 凶暴な生き物に襲われたら、俺たちだけで対処しなきゃいけなくなりますよ?」


「うん、そうですよね。ここまできたら他の人に容易に助けてもらえないですよね。孤立してしまって、とっても危ないですよね」


「そうですよ。ユキコさんも分かってるなら、早く狩りを済ませましょうよ。正直、俺、怖いです」


「大丈夫ですよ。狩りはすぐに終わりますから」


 ユキコは宙に体を停止させると、ゆるやかに体を反転させる。

 そして、口に手を当てながら、


「ふふふっ」


 もう片方の手を伸ばし、メグムの頬をつねっていくユキコ。


 メグム@9は硬い笑みを浮かべながら、


「痛い痛い痛いっ! ユキコさん、痛いです!」


「ごめんね」


 ユキコはメグムの頬から指を離し、手の平を広げる。

 そして、横に軽く振ったら、勢いよくメグムの頬にぶつけた。


『パッツィーンッ!』


「ふぇがっ!」


 メグム@8は苦痛の表情を作りながら、顔を背けさせられる。


 それから、頬を少し赤く染めながら戸惑いの顔を向け、


「ユキコさんっ、痛いですって! どうしたんですか!?」


「大丈夫、気にしないでね」


 ユキコはこぶしを振り上げると、メグムの頭に緩やかに振り下ろしていく。

 こぶしは弱い殴打となって、メグムの頭に衝突していった。


 そして、メグム@7は顔をしかめさせながら、すぐにユキコの両肩を突き飛ばし、


「痛いって! やめてくれ!」


「うぎゅっ」


 ユキコ@5は目をつむりながら二メートルほど後退していった。


 そして、宙で体勢を立て直した後、表情を険しくさせながら、


「いってぇなぁ! なにすんだよ!」


 すると突然、ユキコの頭に二つの動物の耳が生えだし、腰から下の部分から少し太めの四十センチメートル程の尻尾が現れた。


 メグムは目を見開いて困惑の表情をしながら、


「ユキコさん、どうして? それに、その姿、は?」


「あれ、メグムさん、いえ、メグムは知らないのかしら? 猫人間キャヒュマンットとは仲良くしているのにね。……狐人間フォヒュマンックスには興味なかったかしら?」


狐人間フォヒュマンックス?」


「そうよ。これが私の本当の姿」


「……すごく、美しさを保ちながらも可愛らしさがあって素敵です」


 ユキコは一瞬口元を緩めるけど、すぐに乾いた笑みを向け、


「その呑気のんきな所も、嫌いなんだよっ!」


 険しい表情を作り出し、握りこぶしを振り上げる。

 それから、メグムに向かって宙を突き進んでいく。

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