猫も犬のように鼻が利く
後日、メグムは枯れた小麦を地表から抜き取る作業をしていた。
そして、ユキコは吊るされている大地と岩の天井をつなげている鎖を
「メグムさん、こんにちは!」
鎖を手で軽く掴みながら、
メグムは鈍い動きで体をユキコに向け、そしてすぐに笑顔を作り出し、
「あっ、ユキコさん!? 急にどうしたんですか?」
「どうしたって言われても……昨日のメグムさんの事情を聴いたら、今日はどうしてるのか気になってしまって、また来ちゃいました。迷惑でしたか? 邪魔だったらすぐ帰ります」
眉尻を下げ、硬い笑みを浮かべ、頬をかいていくユキコ。
メグムはたじろぎ、首を高速で横に振りながら、
「いえいえ! わざわざ俺みたいな奴なんかの為に来てくれて嬉しいですよ!」
「本当に? ほっ、よかった」
それから、メグムとユキコが楽しく会話しているところに、白髪の女性が宙を移動してゆっくり近づいていく。
白髪女性は二十代前半の容姿をしていて、身長は百六十センチメートル程。
眉の上あたりで前髪を流し、後ろ髪はうなじ付近で切り揃えて、頭頂部の毛が数本跳びはねている。
黄色い瞳を目に宿し、目じりは
そして、頭頂部と両側頭部の間から、猫の耳が一対生えている。
それから、薄まった赤みを帯びた長そでに、色が落ちている黒いボトムスを履いていた。
また、胸部に小さなふくらみを作り、腰の下からは四十センチメートル程の猫の尻尾を伸ばしている。
白髪女性は笑顔を浮かべながら大きく手を振り、
「メグムー! 様子見に来たよー」
「おおー、ンマル」
ンマルと呼ばれた白髪女性はメグムの近くの大地に足をつける。
そして、こわばった笑みをユキコに向けながら、
「えっと、こんにちは」
「あ、こんにちは」
微笑みながら軽く頭を下げるユキコ。
メグムは微笑みながら腕をユキコに向けて伸ばし、
「あ、紹介するね。この人は――」
ンマルは鼻を小さく動かしていく。
そして、尻尾を上下に揺らし、半眼と人差し指をユキコに向けながら、
「メグム、その人からは、におうよ!」
ユキコは目を丸くして驚愕し、
「はいっ!? なにを言ってるのかしらこの人は。ちゃんとにおいがしないよう徹底してるわよ!」
「……すごくにおう」
「メグムさん! この失礼な人は?」
メグムは一瞬肩を小さく震わせ、
「えっ!? ああ、友達の――」
ンマルは尻尾を激しく左右に振り、両手を腰に当てて、
「ところで、メグムは今日、体を痛めたりはしたのかな?」
「え? いや、今日は特に何も。無傷だよ」
「ふぅん、そっか。よかった。それなら安心」
「ん?」
ンマルは口角を上げて、どこか冷たい笑みを作る。
そして、右手を横に広げたら、力強くメグムの左頬に向けて手のひらで殴打していき、
「……メグム、目を覚まして!」
『パツィーン!』
メグム@9は表情を歪ませながら顔を横に素早く向かせられながら、
「ふぁっぐ!」
ユキコはメグムを守るかのように自分に抱き寄せながら、
「ちょっと! いくらなんでもいきなり暴力とかありえなくないですか!? どんだけ野蛮なのよ!?」
「ンマル、どうしたんだよ急に?」
ンマルは
「メグム、その人より、ボクと一緒に過ごそう?」
「え、なんで? ユキコさん優しいのに。というか、三人でお話でもよくない?」
ンマルは悲しそうに尻尾と眉尻を下げて、メグムを見つめていく。
そして、体を反転させたら地面を蹴り、無言で宙に飛び去って行った。
メグムは困惑しながら首をかしげ、ンマルの背中を目で追っていき、
「ンマルのやつ、いったいどうしたんだ? あ、ユキコさんごめんなさい! なんか彼女、今日は機嫌がよくなかったみたいで」
ユキコは明るい笑みを作りながらゆっくり首を横に振り、
「いえ、いいんですよ。誰だって不満をぶつけたくなるのは仕方がないことですので」
「はは、ありがとうございます。ユキコさんが大人で助かります」
「そう? ありがとう」
メグムとユキコは幸せな雰囲気を振りまくかのように、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます