第8話 班作りはいかにフライング出来るかが肝
新学期が始まってから一週間が経過した今日、主人公クラスの生徒たちにとって待ちに待った異能力検診が行われる。
異能力検診と言うのは普通の学校で言うところの体力テストと健康診断が合わさったもので、発動に使用するマナの質を調べたりするのだ。
どうしてこれを楽しみにしているのか。その答えはずばり、異能力診断の結果に応じて、主人公クラスの生徒にはバッジが配られるからである。
異能力者は皆異能力レベルという数値を持っているが、主人公クラスの生徒たちはそれとは別に主人公レベルというものを与えられる。
最大10レベルで測られ、高ければ高いほど主人公……つまり、異能力で悪さをする者たちへ対抗したり、異能力を世のため人のために役立てられる人材というわけだ。
ちなみに、
このクラスの生徒たちはそれを目指して、日々成長しようとしているのだ。零斗は例外だが。
「それでは、4人グループで順に診断を回ってもらう。10秒で作れ」
零斗も
どうしようかと困っている……というか、別に二人でも良くないかと諦めていたところで、
「そっちも足りないだけでしょ」
「そんなことないわよ。他のお誘いを理って来てあげたんだから」
「本当かな」
「どの道、今更他と組めないんだから入りなさいよ」
「仕方ない。金剛寺くんも紅音と一緒でいい?」
「おう、問題ねぇ」
そういうわけで、零斗は金剛寺、紅音、それから紅音が連れてきた
「初めまして、双葉って呼んでください!」
「双葉ね、よろしく」
「ちょっと零斗、初対面で名前呼びは失礼よ。双葉もこんな奴に呼び捨てされるなんて屈辱よね」
「あまりに酷くない? でも、そうだったらごめん」
「い、いえいえ! 私、紅音ちゃん以外にお友達がいないので、仲良くなれそうで嬉しいです!」
ニコニコしながらそう答えてくれる双葉の姿に、零斗は思った。これが天使か、と。
身長は155cmくらいだろうか。華奢な体格に愛らしい瞳、そして下手に出てくれる謙虚な姿勢。どこぞの紅音さんとは大きく違う。
The女の子という存在を久しぶりに見たような気がして、不思議と心が洗われた。
「うんうん、僕も仲良くなりたい」
「双葉、よく見なさい。変質者の目をしてるわ」
「この目のどこが変態だって?」
「生まれた時からそうじゃない」
「紅音ちゃん、そんなことないですよ。零斗さんは優しい人の目をしてます!」
「……そう、だったらいいけど」
本人に言われても尚、「でも、あまり信用しちゃダメよ」なんて小声で囁く紅音は放っておくとして、そろそろ先生の言葉を聞かなくてはならない。
この班は初めに異能力の使用に関連する検査からするらしい。場所は先日決闘を行ったあのグラウンドだ。
終わったら教室に集まるようにという言葉で解散したクラスメイトたちは、それぞれ割り当てられた検査へと向かう。
零斗たちもグラウンドへと移動すると、そこで待ってくれていた研究者風の女性に声をかけた。
胸元には
「あの、検査に来たんですけど」
「はいはい、最初の生徒さんね。名前と住所、好きな食べ物をそこの紙に書いて」
「最後のって必要なんですか?」
「私もタダでこんな労働してるわけじゃないの。好きな食べ物と異能力の関連性を卒論の題材にしてるわけ」
「あ、大学生だったんですか」
「そう。んで、ここの卒業生。私の異能力が検査を簡易的にしてくれるとか何とか言われちゃってね」
「異能力が検査に?」
「見てればわかるって」
4人が書き終えて紙を渡したのを確認すると、須賀さんはパーの状態で広げた手をこちらへ向けてくる。
その直後、指からコードのようなものが伸びてきて、それぞれの肩にツンツンと触れた。
「はい、接続完了。これで測定したい数値が私に送られてくるってわけ」
「歩く測定器ってことですね」
「そゆこと。結構便利なんだよ、食べ物のカロリーとかも測れるし」
「「おお……!」」
須賀さんの言葉に、女子2名がキラキラした目でその手を見つめ始めたことは言うまでもない。
その後、しばらく彼女たちの食べ物トークを少し離れたところから聞くことになる零斗と金剛寺であった。
「……長いね」
「……長いな」
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