第2話 クラス替えは意外な人と同じになることが多い
今日は実にいい天気だ。こんな日は日向ぼっこでもしながら眠りたい気分になるが、今日からまた学校が始まるのだからそういう訳にもいかない。
そんなことを思いつつ、あくびをしながら家の前で棒立ちしていた
「何よ、朝からやる気がないわね。せっかくクラス分けが発表されるって言うのに」
「僕には関係ないからやる気なんて出ないって」
「ふふ、それもそうね。異能力レベル1のあなたじゃ、一番下のクラス確定だものね」
「わざわざ言葉にされると傷つくけど、間違ってないから別にいいか」
先程から上から目線で話している彼女は、零斗と幼馴染でありお隣さんでもある
幼稚園で出会ってからになるから、2人の交流はもう10年以上になる。
年齢を重ねる毎に偉そう感が増してきているが腐れ縁とはよく言ったもので、何だかんだ今でもこうして一緒に学校へ行ったりすることはある。
まあ、大抵は見下すようなことを言われたり、嫌なことに付き合わされたりするだけなのだが。
「私は零斗とは違うもの。必ず主人公クラスに入って、悪い奴らを倒せる主人公になるんだから」
「僕は遠くから見守ってるよ」
二人の通う
そして桜華では一年生時の見定め期間内に異能力の様々な側面における評価が成され、その結果は二年生から配属されるクラス決定に大きく影響する。
紅音が言っているのは主人公クラスという学年内で最も優秀な生徒、見込みのある生徒が集められるクラスのこと。
そこへ配属された生徒のほとんどが将来、異能力を悪いことに使おうとするものたちに対抗する組織へと就職するらしい。
口と性格は少しばかり悪いが、正義感の強い彼女にはピッタリの職場だろう。実際、実力も言葉に伴っているのだから。
零斗だって幼馴染としての色眼鏡が無くとも、紅音が主人公クラス入りすることは間違いないと確信しているレベルだ。
「ほら、さっさと出発するわよ。零斗が最下位かどうかを確認しに行くんだから」
「目的が意地悪すぎる」
「大丈夫、私が笑ってあげるわ」
「全くもって大丈夫じゃない」
さすがの彼も目の前で笑われれば少しは傷つく。昔からよく知っている幼馴染の嘲笑は、知らない奴の笑い声よりも深く突き刺さるだろう。
昔はあんなに気弱で可愛らしい女の子だったと言うのに、いつから悪魔に魂を売り渡したような性格になってしまったのか。
いや、こんなことを言っては失礼かもしれない。零斗は彼女が変わってしまったきっかけをよく知っているのだから。
「ぼーっとしてないでとっとと歩きなさい」
「はいはい、そんな急ぐなら一人で行けばいいのに」
「何か言ったかしら?」
「……何も言ってません」
一瞬の間に軽く首を掴まれた彼が、それ以降反論しようとしなかったことは言うまでもない。
さすがに窒息させられるようなことは無いだろうが、紅音なら苦しむ人を見て楽しんでいる姿が容易に想像出来る。
いくら学校が憂鬱だとは言え、死ぬよりかはずっとマシだ。どうせ窒息するのなら、Fカップのお姉さんの胸の中で……なんて言葉を口に出したら4分の3殺しは間違いないので言わないでおくが。
そんなことを思いながら歩くこと十数分、いつもより賑やかな門を抜けた2人は、すぐ近くにある掲示板へと向かう。
そこに貼り出されたクラス分けを、一番下のFクラスから順に確認していく。
きっとすぐに見つかるだろうなんて心の中で呟きつつ、30人ほどの名前を隈無く確認したが、どこにも自分の名前が無い。
もしかすると能力以外のことが評価されたのかもしれない。勉強は学年2位なわけで、きっとそれが良かったのだろう。
誰に言い訳する訳でもないというのに、背中に走った嫌な予感が確認する目を早めていく。
Eクラスも違う、Dクラスにも居ない。CにもBにも見当たらない。残されたのは一番上の主人公クラスだけ。
異能力レベル1の最弱がそんなところに入れるはずがないし、きっと居眠りのし過ぎで一年生からやり直しになったのだろう。
ああ、母親になんと説明すればいいのか……と肩を落としていると、先に主人公クラスを確認しに行っていた紅音に肩をトントンと叩かれた。
「今落ち込んでるんだけど」
「……」
彼女にしては珍しく、口を開けたまま一点を見つめている。一体どうしたのかとその視線を追った零斗もまた、同じように間抜けな顔になっていたに違いない。
だって、主人公クラスに配属された生徒名の一番下に『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます