主人公Lv.0の僕が主人公クラスに配属されるなんてどう考えてもおかしい〜のんびり生きたいだけなのに巻き込まれすぎじゃないですか?〜
プル・メープル
第1話 異能力者の日常
あの日、この世に初めて異能力者が誕生した。
彼は秘密裏に違法な研究を進めていたその機関にとって、トラブルの最中に生み出された最高の失敗作だった。
人々は彼を『
新たな時代の到来に笑みを浮かべる者。
目にしても尚信じようとしない者。
得体の知れぬ力に恐怖する者。
彼を神の如く崇拝する者。
殺意を握り締める者。
世界が注目する中、『始祖』はカプセルの中で眠らされた姿でお披露目された。
彼のことはコントロール出来ていて、すぐに無力化が可能なため何の危険もない。
人々は研究機関のその言葉を疑いながらも、何事もなく過ぎていく日々にいつしか危機感を薄れさせていた。
しかし、事件が起きたのはそれから数年後のこと。カプセルを破壊して施設を飛び出した始祖が、多くの人の命を奪ったのである。
眠っている数年の間、彼は用意されていた無力化への対策を練り、実際にそれを成功させた。
人々の中には白い羽根で空を羽ばたくその姿を、天誅を与えに来た神の使者だと言う者もいた。
『存在価値の無い者を選別した迄だ』
彼はそう言いながら異能力によって何千人もを消し去り、最後には異能力を発動するために使用されるマナという物質を破壊する光線によって撃ち落とされたらしい。
ただ、それでも年月を経て予想以上に力を蓄えていた始祖にトドメを刺すまでの威力は無かった。
『俺の身が滅びようとも、貴様らの中で俺は永遠に生き続けるだろう』
彼は最後の力を振り絞り、自らの身を爆発させることで残りのマナを拡散し、空気中を漂ったそれらは人々の体の中へと吸引されていく。
マナはいわゆる放射性物質のようなもので、適応したごく僅かな人間の遺伝情報の一部を変化させた。
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「つまり、お前たち異能力者は『始祖』が行ったこの行為によって誕生したわけだ。テストに出るから絶対に覚えておけ」
異能力の歴史について授業をしている先生の言葉に、クラスメイトたちのペンが動き始める。
そんな音に耳を傾けつつ窓の外へと視線を移した彼、
「佐藤、私はこれからお前に一つ質問をする」
「……いきなり過ぎません?」
「ちゃんと聞いていたかのチェックだ。グラウンドで体育をしてる女子生徒を眺める余裕があるらしいからな」
「いや、鳥を見てただけですけど」
「その鳥はメスか?」
「先生はどうしても僕をいやらしい人間にしたいらしいですね」
もうおわかりだとは思うが、零斗はあまり授業へ積極的に取り組む方ではない。むしろ居眠り常習犯である。
しかし、それでも成績は学年2位を維持しているおかげで滅多に怒られることは無い。
ただ、この
おまけに答えられなければ職員室行きという罰ゲーム付きだ。一部の層にはこれがご褒美だと称されているらしいが。
「異能力を使って悪事を働く者を俗に異能犯と呼ぶが、その中でも特定指名手配されている例の集団をなんと呼ぶ?」
「
「ほう、よく覚えてるな。だったら、最近各地の銀行をお騒がせしてる十傑の一人は分かるか?」
「ゾマーです」
「そうそう、銀行にボールを蹴り入れ……ってそれはスイスのサッカー選手だろうが」
「わかってます、
「……黙れ、忘れろ」
普段は厳しい先生が照れる姿に、クラスメイトたちが一斉に沸き上がる。こんな光景が繰り広げられていたのが数ヶ月前のこと。
のんびりと暮らしていられた一年生が終わり、少し憂鬱な気持ちになっている零斗は、今年配属されるクラスを確認するために学校へ来ていた。
彼はそこで予想外のものを目にすることになるのだけれど、それはまた次のお話。
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