ラブコメにならない話

ゴローさん

ラブコメにならない話

「ねぇ。ちょっと変顔してみてよ。」

「こ、こうかな?」

「うーわ!おまえ、きっも!」


 俺の前で、女子グループが爆笑する。

 その中で、先程俺に変顔をするよう要求してきた女子の中のリーダー、村田春花は笑いながら、俺の机をバシバシ叩く。

「ねぇ、あんたどうやったらそんなキモくなるの?」

「それほどでもー」

「褒めてないし。引くんですけど」


 普通なら失礼なやつだと感じるのだろう。

 でも俺は村田に惚れてしまっている。

 惚れた弱みだというべきか、俺は彼女に対して怒ることができない。


 村田が俺のことをそういう目で見ていないのは火を見るよりも明らかだ。

 彼女には、彼氏もいるし、第一ツンデレするようなタイプではない。


 でも、村田が好きでもない俺に対して、その可憐な笑顔を見せてくれるのなら、、、そう思うと自然に彼女の無理難題や失礼な要求にも応えてしまう。


 つまり俺が変なことをするのは、笑顔を見ることへの対価なのだ。

 だから、どんな過激な要求にもこれからも応えていくだろう。

          ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ある日、私は夢の中で、人が死ぬのを見た。

 でもその人が死んだ――いや、死を自ら選んだ理由はあまりにも信じられないものだった。


 人に死ねと言われたから死んだ。


 こんな理由、現実ではありえないだろう。

 でもどこか気になってしまって、実際に自分もしてみることにした。

          ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 村田は自分の彼氏に言ってみる。

「ちょっと自殺してみてくれない?」


 すると、いきなり彼氏の顔が青くなっていく。


「春花。俺、なんかした?なんでそんな事言うの?」

「いや、なんとなく気になったから。」

「僕、春花がそんな人だと思わなかった。ごめんね。」


 彼氏は、いきなり座っていたカフェの席を立って出ていってしまった。


「いや、まじで真に受けられても困るんだけど、、、」


 とはいえ、村田は良くも悪くもドライだ。

 こんなことで分かれるなら、もともとこういう運命だったのだろう。


 そう考えているうちに、あることを思いついた。

 ――あいつに頼んでみよう。

          ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ねえ。ちょっとお願いがあるんだけど」

「ん?なに?」

「自殺してみてよ。」

「いいよ、、っては⁉」

 俺は驚く。いや、いくらなんでもやばすぎだろ。

 そんな俺に構わず、村田は続ける。


「いや、人が自殺しているのを夢で見たんだけど、一回見て見たくなって、、、お願い!」

 笑顔で頼んでくる村田、その顔を見ながら、俺は覚悟を決めた。

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