第236話 短編『春を待つ君』の覚え書き

 短編は苦手である。

 が、『カクヨム』ユーザーになってからは、必要に迫られて執筆した。

 実践すると、なかなかに楽しい。

 ほぼ一発アイディアなので、そこに辿り着くまで苦労するけれど。


 今回は記録として残して置きたいので、短編『春に待つ君』について書いて置く。


 この手の話は多いと思う。

 近年で思い付くのは、『わたしを離さないで』『約束のネバーランド』。

 映画の『アイランド』は主演がユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンの豪華仕様なアクション。

 『地球へ…』の序盤も、同じ構造を持っている。


 ただし、執筆中は『カンビュセスの籤』と『Vermillion』がリフレインしていた。



 『カンビュセスの籤』は、藤子不二雄氏のSF短編の最高傑作だと思っている。

 

 草一本すら残らない荒野と化した地球。

 生き残った僅かな人々は冷凍睡眠を繰り返しつつ、宇宙の果てへと救難信号を送り続ける。

 誰かひとりが生き残れば、遺伝子を辿って全てを再生できる。

 ひとりずつ減ってゆく仲間に心折れそうになりながらも、針の穴の如き希望を捨てない。


 やがて――最後の生存者となった少女は、絶望しただろう。

 宇宙からの救助者は現れない。

 だが、思わぬ人物が現れた。

 古代ペルシャからタイムスリップした青年兵士である。

 彼は仲間たちから追われ、遠い未来に着地したのだ。

 

 少女は、これこそ『運命』だと確信する。

 もう一度、冷凍睡眠に入り、未来に託すチャンスが与えられたのだ。

 次に目覚めた者の前に、きっと救助者が現れるに違いない。

 地球は再生する、と少女は確信する。


 少女視点での粗筋を再構成させていただいたが、作品は青年視点で進む。

 この作品のラストカットは美しい。

 究極の愛の形が描かれているからだ。



 『Vermillion』は、アニメ『ぼくらの』の二期エンディング曲だ。

 本編に賛否はあろうが、オープニング曲とエンディング曲の素晴らしさを否定できる人は居ないと思う。

 石川智晶さん(一発変換できた!)の清んだ歌声。

 『Vermillion』は、「去って行く僕を忘れないで」と願う切ない歌だ。

  

 地球のために、命と引き換えに戦わざるを得ない少年少女たち。

 操縦者が減るたびに、ロボットのコクピットの光点は減る。

 敵の光点が少なければ、戦闘経験が多いことになる……。


 並べて書けば、どっちも『人が減って行く』共通点があった。




 で、『春に待つ君』も去って行く少年たちの物語だ。

 高校二年生と設定したが、もうちょい幼い雰囲気がある。


 裏設定としては、やはり遠い未来だ。

 彼らには『記憶』が全てだ。

 『死への恐怖』も持たず、逃げようと画策する感情も無い。

 箱庭で生まれ、消えていく宿命だ。

 そんな彼らは、目覚めた瞬間から、自分たちの宿命を知っている。

 

 本編ではカットしたが、主人公が『自分が使ったノートの束』を球根の傍に置くシーンが在った。

 

 『管理者』の明確な意図は伏せた。

 ただし、彼らも必死だと云うことは書いておく。

 を望んでいる訳では無い。

 壊れた後の世界では、文明の担い手を絶やさぬための他の手段が無いのだ。

 


 

 困ったのが『ジャンル』分け。

 『SFファンタジー』が正解だが、『童話・詩・その他』にせざるを得なかった。

 

 この話も、本編後に『あとがき』ページを作って書くべきだったかも知れない。

 けれど、これは余談。

 物語自体はあそこで終わらせ、「立つ鳥跡を濁さず」にしたかった。


 春に目覚めた彼らは、あの渡り廊下で少女たちを見い出すだろう。

 冬の始まりの日に起きることを知りつつも、彼らは恋をする。

 その翌年、彼らは手を取り合うかも知れない。



 一応、『春を待つ君』へのリンクも貼って置きます。

https://kakuyomu.jp/works/16818093076989152193/episodes/16818093076989279245

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