第224話 『黄泉月の物語・第174話』の衣装解説

 高校生の頃だったろうか。

 日本の伝統色見本が掲載された書籍を購入した。

 当時で二千円以上で、痛い出費だったが満足した。


 数百種の時代ごとの色見本・解説が載っていて、憧れていた十二単の色彩の美しさを思い、胸を高鳴らせた。


 だが、今は――検索すれば、色見本がズラリと出て来る。

 色見本の書籍も、本棚のどこかに埋もれてしまった。


 ここから先は、タイトル通りの内容となる。

 本編の箸休めとして、そちらに掲載すれば良かったのだろうが、ラスボス戦に割り込ませることも出来ないので、ここに載せて置く。

 

 

 一昨日は、古代色を掲載しているサイトのカラーチャートと睨めっこをした。

執筆中の小説の、クライマックスでの主人公たちの変身シーンの髪色や衣装の色を決めるのに、迷いに迷った。


 カラーチャートは横五列に分かれており、五人分を一列ずつから選んだ。

 唯一の女子は、最初からピンク系の髪にすると決めていた。

 男子四人は、黒・明るい紺・亜麻色・彩度押さえめの金髪にした。


 主人公は赤茶色にしたかったが、性格的に赤茶の雰囲気では無いので、『亜麻色』にした。

 灰色がかった薄茶、だろうか。

 『亜麻色』は明治以降に定着した呼称だそうだが、古代色には該当する色はあっても色名の語呂が良くない。

 なので、『亜麻色』とせざるを得なかった。

 亜麻自体は存在したので、妥協した。

 

 金髪も、色彩名に悩んだ。

 『栗色』と書きたかったが、チャート表にこの言葉は載っていない。

 他の候補に上がったのが『菜の花色』だが、これも語呂が良くない。

 結果、それに近い色の『承和そが色』とした。


 色と色名と語呂には本当に苦労するが、悩みつつ決めるのは楽しくもある。

 

 

 そして、彼らの装束は、ヤマトタケル風。

 しかし、文章で判りやすく書くのは骨が折れる。

 

 今作では、白地の衣装の下に裏地を付けた。

 源氏物語では『桜重ね』なる言葉が出て来る。

 表地を薄地の白、裏地に紫か真紅を使い、裏地の色がうっすらと透けて桜色に見えると言うやつだ。


 それを採用し、剣士二人は白地に紅の絹の裏打ち。

 術士二名は白地に青を裏打ちして、光の加減で桜色と空色に見える、としたかったのだが、上手く描けなかった。

 改訂版では、もっと伝わりやすいように修正したい。


 ヤマトタケルの衣装のはかまは膝下で紐を結ぶのが時代的に正解に近いのだろうが、絵的に締まらないので、足首で紐を結ぶようにした。

 空を飛んでいるので。はかまがめくれて、脛が見えるのは避けたかった。

 

 アクセントとして、上衣の下に薄地の裳を付けさせた。

 現代なら、チュールに相当するだろう。

 もちろん、見映えを考慮してだ。


 唯一の女子の衣装は、弥生時代の高貴な女性の衣装を参考にした。

 高松塚古墳の女性像の装束より、色使いを簡略にした感じになる。

 

 薄紫の髪を結って花を飾り、上衣は灰桜色で、裳は白。

 肩に掛ける比礼ひれ(ロングストール)は黄色。

 巫女風に裸足とし、手首と足首に銀の鈴輪を付けた。

 

 この衣装で、天馬の背に手を付き、膝を揃えて正座に近い体勢で乗る。

 鞍に跨ったり、横座りするのは、絵的に却下した。

 手綱を握らせたくなかった、のが理由かも知れない。

 

 本当は、全員の瞳の色も書きたかったが、書く余地が無かった。

 書けは、間延びしそうな気がして、断念した。

 男子の鉢巻きとか、顔のタトゥーとかも同様。

 

 文章のリズムは、本当に難しいものだ。

 今作の反省点は、改訂版で生かしたいと思う。


 改訂版のクライマックスを書く頃には、文章力が上がってるといいな(*'ω'*)


 

 該当の174話のリンクも貼って置きます↓

https://kakuyomu.jp/works/16816700428178248114/episodes/16818093075794538833

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