第25話 その後
それからしばらくして季節が春になった頃に街でウィニーちゃんとフリッツの結婚式が執り行われた。ギルドを貸し切って皆から盛大に祝われて宴会騒ぎになっていた!
フリッツは街に家を買いそこにウィニーちゃんとラブラブ新婚生活を送っている。
ルディは
「フリッツに先を越されて悔しい…!」
と嘆いていた。
私の指には今婚約指輪が嵌られており、男爵家の私の部屋は改装中で結局ルディの部屋にまた一緒にいる。
改装が終わりドレスが出来上がったら式を挙げることになっている。
うちのロッテン侯爵家もこっそりとお忍びで招待状を送って来てもらえることになった。
一度ルディと一緒に王都へ行き結婚報告をしたらお父様は
「そうか…ルディとならまぁそこそこ大丈夫だろう」
「おめでとう、シャルロッテ!式を楽しみにしているわ!」
お母様も喜んでくれた。
弟のシルビオは
「まぁ、僕はそうなると思っていたけどね…。だってここにいた時からルディの奴お姉様の事恋する目で見ていたし!」
と言うとルディは赤くなり
「そっ、シルビオ様!!俺そんな分かりやすく無いですしここにいた時はそんな自覚なかったですし!」
と否定するとシルビオは
「えー?そうかなぁ?まぁルディ鈍いとこもあるからな。あれで自覚ないんだ。くくく!」
とシルビオは笑う。
「そう言えば…エドガー様とルトレシア様は…」
と近況を聞くと…お父様が
「うむ…それが…二人はどうやら旅行へ行ったらしいのだが、ルトレシア様が途中でまた逃げ出してな…、旅先で捜索中だよ…」
と言ったので驚いた。
「ええ……大丈夫かしら?」
「まぁ…そこはエドガー様がルトレシア様にこっそり追跡魔道具をアクセサリーに仕込んでいるから居場所は直ぐにバレるだろうな」
と言った。ルディは苦笑いし
「それはルトレシア様も逃げられそうにないですね」
と言う。
「ほらほら!とりあえず今日は泊まっていきなさい?皆でお食事にしましょう!」
とお母様がシェフに伝えた。
やった!うちのシェフの味も久しぶりだとその晩は皆で楽しく食卓を囲んだのを覚えている。
*
男爵と奥様は南国の方に家を建て私達の結婚式が終わるとそちらに出発する様だ。
「やっとルディが結婚してくれるから私も落ち着けるよ!!ルディ後は頼んだぞ!」
と押し付けられたルディはもうここまで来たら覚悟を決めており
「はいはい、いいですね年寄りは。南国でゆっくり隠居生活…。はああ」
とため息をついていた。
ジュディス奥様は
「あらルディ…それも人生の楽しみの一つだわ!貴方も歳を重ねればわかるわよ!いい男爵になってね!そして孫が産まれたら連絡して!」
と念を押されていた。
アランは結局クラウスナー領から出て行くことになり隣のミリア様にしつこく付き纏っているようだ。本人は
「愛の行動だから気にしないでくれ!!」
と完全にヤバい奴になっていた。
ルディは呆れて
「もうほっときましょう。関わりたくない…」
と幼馴染を放置することにした。
捕まらないでくれと祈るばかりだ。
私の部屋改装と夫婦の寝室増築中で私はルディの部屋の狭いベッドでいつもルディと横になって眠る事にしているのだが、ルディは素直でないのでけして手は出してこない。普通に眠る。
「ウィニーちゃんみたいな感じだったら俺も襲ってたけどシャルの貧相な身体なら我慢できますからね」
とか失礼な事を言い、怒りでキレそうになるが何とか人形で魔力量を抑え込んだ。
「それにやっぱり初夜のお楽しみをとっておきたいのです。俺は案外ロマンチストでしょう?双子でもフリッツみたいに野蛮じゃないし」
と言うが以前フリッツに聞いたら
「ルディは案外臆病だからなぁ。昔犬触るのも俺の後ろに隠れてたんだぜ!」
と言っていた。本当に素直じゃ無い。
それでもお休みのキスと布団の中で手を繋ぐことは毎日していた。ルディはそれだけで幸せみたいだった。ベッドの中だけめちゃくちゃ甘い顔になる。
シロロは犬の姿でいることが多くなりたまにルディと喧嘩をする。
「グルルルル!」
と言うのがルディにはわからなくて私が翻訳してあげる。
『クソ男め、我の食事は最高級の肉ステーキを所望と言ったろうに!』
と訳すとルディは
「こいつ山に捨ててきた方が良く無いですかね?」
と相変わらず睨み合っていた。
ようやく結婚式の前日になるとソワソワして中々寝付けないらしく本を読んだり練習をしたりしていた。
「明日早いし早く寝ましょう…」
と言うとルディは
「…逆に眠れそうなのが凄い…!シャルは緊張しないんですね…」
「…そんなの明日すればいいじゃ無い。ぐだぐだ言ってないで寝なさい」
と言うと
「眠れないから困る…はぁ、呑気な花嫁だ…」
「じゃあ先に寝るわね…」
と目を閉じて寝ようとすると
「ずるい!自分だけ!!」
と言うので
「もう!そんなに眠れないなら眠りの魔法でもかけなさいよ!」
と言うと
「間違って3日くらい眠ってしまったらどうすんですか!!」
と言って反論してこっちも眠れないで困ったりした。結局少ししか眠れなくて私達は眠い目を擦り式に出る事になった。
結婚式は男爵家のお庭で行った。皆に祝福され、神父さんの前で愛を誓い合いフラワーシャワーの中を歩いてこの上ない幸せだ。ルディだけ緊張してガチガチだったけど。
シロロも人間姿になり祝福してくれた。もう吹っ切れた様でお守りと称して自分の爪の一部をくれた。ルディは引いていたがシロロなりのプレゼントは嬉しかったわ。
「主人が幸せであるのが一番の事だ!今日はとても美しいぞ!隣にいるのがこいつでなければな!」
と言うとルディが私を引き寄せ
「俺の花嫁を口説くな!クソ犬が!」
とまた喧嘩になった。
「何?このクソ人間!!」
といがみ合うので二人に
「いい加減にしなさいよ?私がキレて魔力暴走してもいいの!?折角の結婚式なのに!」
と言うと二人とも黙った。
侯爵家から家族もお祝いに駆けつけて両親達はお互いに挨拶をしていた。
シルビオが意外と村の娘達にモテていた。宴会は夜まで続き私とルディは先に寝ることにした。
というかようやく初夜でこっちのが緊張した。ザビーネさんに用意を手伝われ
「シャルロッテ奥様…とりあえず坊ちゃんは初めてだろうし下手くそかもしれませんがあんまり怒ってはダメですよ!今日だけは甘えてあげてくださいね!」
と凄い念押しされたのでうなづいた。
ルディは完成した夫婦の寝室に来るのが遅く…ようやく来たと思ったら扉からチラッとこっちを除いて中々入ってこない。
恥ずかしい格好で毛布にくるまって待っていると言うのに。
「ちょっとルディ?早くこっちに来たら?そんなとこで何してるの?」
と声をかけるとようやくバスローブを着たルディがこっちにやってきた。顔がもう真っ赤だ。
「……そ、その俺…気の利いたことが思いつかなくて…えっと…今日はその…ドレスとても似合っていましたよ!さすが俺が見立てただけあり…」
「あ、うんそうね。皆褒めてくれたわ。良かったわ。ルディもかっこよかったわよ?」
と言うとルディは照れて
「まぁあんなの着ることもう無いし…シャルが先に死んでも他の人と結婚しないだろうし」
と言う。
「…いや私が先に死ぬことにしないでよ?結婚したばかりなのにもう死ぬこと考えないでよ!全くもう!ルディったら!」
と笑うとルディは優しく目を細めたのでそれが合図になり私達は顔を寄せキスを交わして初夜が始まった。
*
結婚生活が意外と甘々だった。新婚のうちはルディは仕事を済ませると直ぐに私のとこに来て甘やかしてきた。
子供が出来るとまたお祝いになり皆から祝福され両親達も駆けつけて孫の顔を見るとニヤけてプレゼントを置き帰って行く。
クラウスナー領での生活は順調に進み、私はエドガー様に婚約破棄されて良かったと思えてきた。それがなくて魔力暴走を我慢してエドガー様の妻となり王妃となっていたとしても私は多分今の様な幸せは得られなかっただろう。
今…エドガー様はルトレシア様と結婚して祝福された。ルトレシア様もとうとう観念したらしい。しかしストレス発散にちょっと贅沢をしているようだ。
シロロも私達の子供メリーが生まれてから黒髪なのを見て
「メリー様は魔力が高い!やはり主人の子である!きちんとお守りせねば!」
と使命感に燃えている。
ルディは時々夜空を見上げていた。隣に立つと私を抱き寄せ
「俺…とても幸せなんですけど全部騙されてませんよね?」
と確認してくるから笑う。
「もちろんよ!これは現実なの。これから一緒に歳を重ねましょうね」
「……そうですね。ここの冬は寒いから男の子が産まれたらちゃんと後継ぎをしてもらいさっさと我々も南国で暮らしたいですね。お父様とお母様なんて毎日パラダイスみたいな生活をしていると手紙がこないだ届いて……憎たらしい!」
とルディはギリギリ悔しがった。
「そうねまだ先だけど…次は男の子だといいわねぇ…」
と二人で語り私達は星を見上げその後もいつまでも幸せに暮らしたのだった。
婚約破棄後は元執事の実家の使用人!? 黒月白華 @shirofukuneko
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