第13話 不明確な今後(終)


 退庁後、疲れを感じた葵は、今回の事件の振り出しと言える銀座に来て、再び、例の牛丼屋にて夕食をとった。

 何時もの如く、牛丼屋の店内では、多くの外国人が店員として忙しく働いている。そんな外国人店員の1人が、テーブルについた葵に話しかけて来た。

 「お客様、ご注文はお決まりですか?」

 「夜定食、それとビールも」

 窓側に席をとった葵は、街行く人々を眺めつつ思った。

 「既に外国人はお客人ではないのよね。私はまだ、独身だけど、外国人の夫を得る

 かもしれない。街の治安を守ることは、人々の安全を守ることだけど、そこに国籍

 は関係ないはず。ここにいる店員さんも含めて、自分の人生は、自分で責任をもっ

 て生きて行かねばならない。でも、『社会』から逃れない私達は、『社会』を定義

 する『政治』や『政治』が作る『法』からも逃れられない。『外国人参政権』は、

 最早、逃れられない途かもしれない。本件に協力してくれた××小学校の子達が大

 きくなった頃には、日本はどうなっているのだろう」

 そんな中でも、

 「外国人参政権反対」

 の声が、右翼の街宣車からであろうか、何処からか聞こえて来た。葵は、「法」にのっとって動くべき存在なので、「法」をつくる「政治」の動きによって、今後、どのように動くはわからない存在である。

 「しかし、津島に自殺されたのは、とんでもなく失敗だった。『世界創世教』の本

 格的正体が分からなくなるかも」

 しかし、捜査の主導権が、あるいは、公安に向かったとなると、自分等には無関係になる話かもしれない。改めて、我々は、公安に利用されていたのかもしれない。彼女は、自身が改めて、日本という国家の歯車であることを思わされた。

 と思いつつ、

 「まあ、とにかくよく頑張った!お疲れさまでした。山城葵警部補!」

 と心中で、自身をねぎらった。

 そこに、注文の夜定食とビールが運ばれて来た。夕食となった葵であった。


(完)

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203X年‐多民族国家・日本にて 阿月礼 @yoritaka

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