第7話 後日談
いつもの放課後、紗英が神妙な顔で話しかけてくる。
「美咲…私この間、登校中に綾乃さんに会ったのだけど。」
『綾乃さん、どうだった?』
「うん…結局彼氏さんの事、警察に相談したんだって。つきまといされてるって。」
『え…⁉︎それじゃあ彼氏さんは…。』
「迷惑防止条例違反で、逮捕…はなかったけど、厳重注意されて、以後綾乃さんの周囲に近寄ってはいけないんだって。」
『そっか…なんだか複雑な事件だったね。』
私たちが見た限り、あのイケメン彼氏は悪い人には見えなかった。
むしろ、綾乃さんの為に一生懸命やり直そうと必死だったに違いない。
けれど、綾乃さんの意思も固かった。
好きだけど、これ以上お付き合いは出来ない。
きっとそれは、お互いの将来を思っての事なんだと思う。
優しい綾乃さんだから、受け入れてヨリを戻す事は簡単だったと思う。
戻らなくても、友達のように連絡を取り続ける選択肢もあったと思う。
けれど、綾乃さんが警察にまで相談したことは、きちんと区切りをつける為だったのだろう。固い意思で別れたのに、中途半端に連絡を取り続けたら、相手に期待させてしまう。
綾乃さんなりに、精一杯彼を思った決断だったろうし、彼氏だけでなく、綾乃さんにとっても非常に辛い決断だったと思う。
なんせ、相手が嫌いではないのだから。
「でも、今回も板垣くんのおかげで、最悪の結果にはならなかったのかな。」
『そうね…私も今回ばかりは早まり過ぎたわ。一歩間違えたら、もっと深刻な状態になってたかも知れない。…あーあ、これからはもう少し考えてから行動できたらいいなぁ。』
ふと視線を感じて、周りを見ると影薄丸がこちらを見ていた。
『な…何よ。文句あるの。』
「いや…変わっていけて、少し羨ましい。」
影薄丸は、いつも以上に小さな声で呟いた。
『え?アンタもしかして自分を変えたいの?』
「…別に。」
『またー。照れちゃって。』
「まあまあ、美咲。』
こうして、綾乃さんの悩みは無事解決できた。
私たちも、いつか大人の回答を身につける日が来るのかも知れない。
彼氏も出来ない中学生の私にはまだまだ早いけれど、せめて紗英とはその日までずっと友達でいたい。
影薄丸も、よくわからない奴だけど、きっと悩みがあるのだろう。
人は、誰でも複雑な事情を持っているって、今回の事件で学んだ。
だから、そんな時は、私たちで良ければ力になってあげてもいいかなって、今日は素直に思えてる。
真の闇より無闇が怖い!〜本当の愛〜 かぬち まさき @jhons
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