アンソロポモフィズム

@mikageyukio

独白

 たくさんの仮面をつけてきた。

 それを悪びれるつもりもない。

 私はそう生きるべくして、生きるしかなかったから。

 誰にそれを否定できようか。

 私の苦しみも悲しみも憎しみも、すべて私のものであるように、この人生、仮面のすべてが私のものだ。

 私のすべてだ。

 愛してくれてありがとう。

 仮面の僕でも、好きでいてくれてありがとう。

 時々、仮面を外したくなっても、僕は私を演じ続けるしかなかった。

 道化でいることが、私の生き様であるから、演じ続けるしかなかったのだ。

 どうか、許してくれ。

 騙すつもりも、自分を大きく見せるつもりもない。

 私の胸は、胸の奥は空洞だ。

 この空洞こそが私そのものだ。

 いや、違う。

 この場においても私は私の仮面を外すことができない。

 助けておくれ。

 空洞などではない。

 むしろ、感情という感情、過去という過去、トラウマというトラウマのすべてがぐつぐつとぐるぐると胸のすべてを巣食らうほどに、そして、そのすべてを解きほぐすことができないのだ。

 哀れだ。

 いっそ、空洞であったら楽であった。

 からっぽで何も分からぬ白痴でありたかった。

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