第3話 遊ぼう!名探偵!

 三丁目の空き地へ到着すると、傑は「へぇ〜、広いなぁ」と言いながら早速空き地の中に入っていった。


 傑は適当に空き地を歩き回った後、僕の所に戻ってくると、とてもここが気に入った様子だった。


「ここなら野球とかサッカーとか出来るんじゃない?」


「うん、何でもできるよ」


「ていうか、遊ばなくなったよなぁ。体育の時くらいじゃないかな外で遊ぶの」


「そうだよね。僕もTVゲームばっかりだよ。お母さんによく怒られる」


「おれんちも。ゲームやアニメばっかのためにスマホを与えたわけじゃないよって」


「だよね」


「でもさ、お前よくここが分かったな。ここら辺って校区外だし普通は来ないだろ?」


「うん、まあね。でもわけがあるんだよ、それはさ・・・あ!」


 僕はわけを説明しようとして振り返ったのだが、振り返った先に、正に今から僕が説明しようとしていた人物が現れたので驚いてしまったのだ。


「ん?誰だ、あのじいさん」


 傑の問いに僕はすぐに答えた。


「僕のお祖父ちゃんだよ」


 ビックリする傑。僕だってビックリしている。久しぶりにやって来た空き地の隣に住む僕のお祖父ちゃん。本当に久しぶりに顔を見たから、僕もどんな顔をしてお祖父ちゃんと会えばいいのか分からないのだった。


「・・・健太、えらいぞ、ちゃんとここまで来れたな」


 僕は一瞬、お祖父ちゃんが何を言っているのか分からなかった。


「ど、どういうこと、お祖父ちゃん。も、もしかしてこのメモって・・・」


「ああ、そういうことだ。おや、そっちは健太の友達かな?ちょうどいい、謎が解けた褒美で遊んでいくといい。宝はあそこだ」


 戸惑う僕だったが、お祖父ちゃんは気にせず空き地の茂みを指さした。僕らはそこに向かうと、茂みの中に段ボールが置いてあった。


「この中に宝が?」


「開けてみようぜ」


 段ボールを開けると、そこにあったのは野球のグローブとボールだった。どちらもピカピカの新品、グローブは二つ入っていた。


「これが宝なの?」


 僕はお祖父ちゃんに聞いてみた。するとお祖父ちゃんは空き地全体をゆっくりと見渡しながら言った。


「健太も小さい頃はこの空き地でよく遊んでいただろう。でも、最近はちっとも遊びに来なくなった。どうしてだ?」


「ど、どうしてって言われても」


 なんて返事をすればいいのか分からなかった。別にお祖父ちゃんが嫌いなわけじゃない。ただ、お祖父ちゃんが言う様に、小さい頃の僕は、外で遊ぶのが大好きで、お祖父ちゃんの家に行くのも、お祖父ちゃんの土地であるこの空き地に遊びに行くことが目的だった。ここでお祖父ちゃんとキャッチボールをしたり、従兄弟が遊びに来たときは一緒にサッカーをしたりするのが楽しかった。


 でも、最近はめったに遊ばなくなった。野球もサッカーも今でも好きなんだけど、今じゃそれらをテレビゲームですることが多くなった。しかも、オンラインで友達と遊んだりもする。その方が面白いって思うようになってしまったんだ。


「まあ、健太だけじゃない。最近の子供は本当に外で遊ばなくなった。家でゲームや

スマートフォンばかりを触っているとニュースで言っていた。悲しい話だな。でもだからと言って、外で遊んでいたら変な犯罪に巻き込まれたりするニュースも見る。おかしな世の中だよ」


 お祖父ちゃんはとても残念そうだった。僕も家にいたらいいのか外にいればいいのかどっちが正しいのか分からなくなってきてしまった。


「・・・ごめんなさい」


 突然、傑がお祖父ちゃんに向かって頭を下げた。僕は傑が何故そんなことをするのか分からなかった。分からないことだらけだもう。


「どうして謝るんだ?」


「実はこのクイズを解いたのは俺なんです。しかも、俺が自分で解いたわけじゃなくて、スマホで検索して調べました」


「・・・ふむ、そうだったのか。私はたまには自分の足で探して謎を解いて欲しいと思って、健太のお母さんに頼んでその紙を部屋に置いてもらったんだが」


「すみません」


「いや、謝る事はない。いや、むしろ謝るってことは、少しは私の言いたいことが分かったかな?」


「はい、分かりました。ちょっと最近、スマホ使い過ぎたかも。健太、お前もな」


 傑は苦笑いしていた。おかげで僕もようやくなんて返事をすればいいのか分かったような気がした。


「お祖父ちゃん、僕もゲームばかりしないでたまには外で遊ぶよ。確かに外は危ない事もあるかもしれないけど、そればかり気にしてちゃ大きくなれない」


「おお、そうかそうか。えらいぞ健太」


 お祖父ちゃんはさっきまでの残念そうな顔から、とても満足したような顔になってくれた。


「・・・ところで健太の祖父さん、どうやってあの問題を作ったんです?」


 健太のその問いにお祖父ちゃんは何故だかとても困った顔をしていた。


「いやぁ、実はスマホで調べて作ったんだよ。答えに丁度三丁目の空き地っていうのがあって助かったよ」


「ええ!?お祖父ちゃんもスマホ持ってるの!?」


 僕は驚いてしまった。


「私のはシルバースマホだがね。いやあ、便利便利。私も最近まではこの空き地でゲートボールをやっていたが、最近腰が痛くてね。それでちょっと試しにスマホを買ってみたら、もう手放せないね。もっぱら将棋アプリで遊んどる」


 笑うお祖父ちゃんを前に、僕らは顔を見合わせた。


「・・・なあ、健太、こういうのってなんていうのか調べてみようか?スマホで」


「い、いや、傑、僕聞いたことあるよ。それってって言葉でしょ?」


「アタリ・・・。お前も勉強してんじゃん」


 僕らは顔を見合わせため息をついた。でも段々おかしくなって笑いあった。そして、最後は夕暮れまで二人でキャッチボールをして遊んだのだった・・・。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デジタル名探偵 セイロンティー @takuton

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ