照れ顔の意味

 「七海,あんた最近どうしたの?」

 「え?どういう意味?」

 「だってあんた最近笑うことが多くなったし,人と話すことが増えた気がするんだけど,何かあったの?」

 「いやいやいや何もないよ!」

 もう明らかな嘘だ。私は嘘をつくのが本当に下手だと思う。いっそのこと本当のことを言ってしまった方がいいのかもしれない。いやここで話してしまうと彼に想いが伝わってしまうかもしれない。やっぱりここで話すべきではないのだ。

 そうこうしてるうちに放課後になった。想いがバレるのは嫌なくせにいつも通りグラウンドに向かってしまう。もうルーティーンになっている。そして気が付いたら彼の姿がカメラに収まってる。

 彼は私のことをどう思ってるのだろう。この間は楽しく話すことが出来たが,これは友達といっていいのだろうか。もちろん彼のことは好きだ。それは間違いない。だからといって発展なんておこがましいことは考えていない。彼にはもっとふさわしい人がいるだろう。私はこのままでいい。なんなら彼と少し話せた。それだけで満足した。このまま人生が終わってもいい。

 今日も彼の姿をフィルムに収める。何かが昨日までと違う。自然と写真を撮ると笑ってる気がする。いや笑ってるというよりは照れてるというべきなのか。どちらにせよ昨日までより世界が輝いて見える。そんな気がした。

 もう何枚撮っただろう。彼だけのアルバムが作れそうだ。もし作るなら自分だけのものにするような気がする。見られるのは恥ずかしいから。

 そんなことを考えていると彼がこっちに向かってきた。今日は何を言われるのか。それが気になって仕方ない。でも昨日までとは違う。心の準備は少しは出来ている。

 「あの…」なぜだろう彼の顔が赤くなった気がする。

 「七海ちゃん」え?名前呼び?何それ聞いてない!顔が危うく破裂しそうになったじゃないか。

 「今度試合見に来てくれないかな?」

 「え?」

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