後ろ姿の記憶

 「よければこれからずっと撮った写真見せてくれないかな」

 「え?」

 どういうことだろう。意味が分からない。聞き返してみる。

 「それってどういう意味…かな…」

 「どういうって…そのままだよ,写真見せてほしい。」

 何を言っているんだこの人は。これは夢に違いない。そうだ私のリアルはこんなものじゃないはずなのだ。思わず自分のほっぺをつねってみる。

 「いててて…」なんとリアルのようだ。

 「いきなりどうしたん?大丈夫?」

 「何でもない。それで写真見せてほしいって…」

 「相澤さんっていつもここで写真撮ってるよね?だから見せてほしいなって。」

 な…それはまずい。私の想いがバレてしまう。見せるわけにはいかない。

 「いやいやそんな見せるもんじゃないよ…別に上手くないし…」

 「いいからいいから,ちょっと貸してよ。」

 カメラを奪われてしまった…もうおしまいだ…

 「あれ?サッカーの,しかもオレの写真ばっかじゃん。」

 もうだめだ…何も言い訳出来ない…こうなったら…

 「実は伊藤君のサッカーしてるところを見たときに…すごい映えそうだなって…今まで黙っててごめんなさい…」言ってしまった…もう後戻りはできない…絶対何か言われる…

 「へーいいじゃん!これからもどんどん撮ってよ!」

 「へ?」思わず声が出た。何を言ってるんだこの人は。

 「それってどういう意味?」

 「いや~これからもオレのこと撮ってほしいなって~だってすごい良かったんだもん,相澤さんの撮った写真。」 

 「へ?」さっきから何を言ってるんだろうこの人は。私のような人間が撮った写真に価値があるわけないだろう。

 「あ!練習始まるから行かないと!それじゃよろしくね!」彼はそうやって練習に向かっていった。まさか彼に写真を見られるなんて…もう死にたいくらいだ…しかしそう考えてる間に私のカメラにはチームのもとに走る彼の後ろ姿が映っていた。

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