第一章 至福直観

第1話 

『──では続いてのニュースです。政府は今国会において、マイナンバーと遺伝情報との紐付けを義務化する、通称コード・ホルダー特定法を成立させる予定です。現在与野党間で協議がなされていますが、差別につながる、プライバシー権の侵害であるとの声も上がっています。また、併せて今後の健康診断や、出生時にも遺伝情報の登録を義務化する法案も…──』


 学生がよく利用する大衆食堂のテレビでは、ニュースキャスターが速報気味に報道していた。近年急増するコード・ホルダー──────特定の遺伝子を持ち、超常的な力を持つ人間の総称──────とその能力を悪用した犯罪に対して、予防のための法律が議論されていている。


(まあ、俺にはそんな能力ちから無いから関係ないけど)


 いつも注文しているメニューも値上げか、学生には辛いな。社会で起こる大きな変化とは無縁のように、ため息を付きながらただ一人心のなかでごちる。やや短めにまとめた黒髪を分けるように頭を掻きながら、ややとっつきにくそうで冷涼な顔を面倒臭げにテレビに向けた。自分は身の回りでコード・ホルダーという存在をこの目で直接見たことはない。


『ついこの間、テレビやネットを通じてコード・ホルダーの持つ凄まじい力を捉えた映像が出回り、世間の人々を大きく脅かしました。フェイクを疑う声もありましたが…』


『今まで自称超能力者なんてものが話題になりましたけれども数も、力もそれとは比べ物になりませんからね、種も仕掛けもないとは正にこの事なんですよ』


「いただきます…」


 誰かに聞かせるわけでもなく、カウンター席で一人割り箸を割りながら小さく呟く。貧乏学生の鷦鷯さざき 悠謳真ゆうまにとっての危機はコード・ホルダーなどではなく度重なる社会情勢不安による物価の高騰だ。その原因の一つがコードホルダーによる情勢不安にあるのは言うまでもないが。テレビの中では依然コメンテータやキャスターが議論をかわしていた。


『しかしですねぇ、私としては急にこんな風にコード・ホルダーなるものが増加しているのは何か裏があると思うんですよね』


『裏ですか?』


『例えば地球外生命体が人間に与えたもの、即ち伝承の中にある神が光と智慧を我々に与えたとされるものの再演とか…』


『これは報道番組ですので、このようなデタラメな憶測は控えるべきですよ』


『デタラメではない!既に超常的な力が民衆に広まっているのは天意という他ないんですよ!これは神によって定められた人類の…』


 ──────────────────────────────────────



 外はすっかり暗く、蒼黒に染まり切った空の下には既に人通りもない。コードホルダーの事件から治安の悪化もあり、一部の者以外はこんな夜中に出歩く者も少なくなった。歩いている者も、明るい大通を行くことはあれど、今歩いているような人通りも明かりも少ないようなこの郊外を歩く者は殆どいない。


(この道が一番近いとはいえ、もう暗いからな…)


 食堂で夕飯をとった後、夜間のバイトを終えて深夜に帰宅を急ぐ。近道である、公園とも言えない自然をそのまま切り取ったかのような広場を突っ切るように歩いて行く。


「ふぁ~…ねむ…」


 上着のポケットに入れていた右手を出しながらあくびをし、周囲を見渡す。街灯の明かりもまばらで、遠方は闇が覆っている。


(面倒くせぇけど金もねえしなぁ、やってらんね…ん?)


 暗がりで視界の悪い道を行く悠謳真ゆうま、木がまばらに立ち並んだ芝生にふと顔を向ける。自分の場所から一番近い木の隣に影が二つ見えた。


「えっ…?」


 そう遠くない距離に、人が倒れている。芝生の上に仰向けに倒れたそれはぴくりとも動くことはなく、薄暗い中でもはっきりとわかった。


 死体だった、既に生命の兆候はなく、祈るように両手を組みながら胸に置き、顔は眼球がくり抜かれて仄暗い穴のようなそれから血が流れている。その死体の異様な状況に動揺する間もなく、その隣にはそれより遥かに異常な存在が唸り声を上げながら屹立していた。


 優に2メートルを超える高さに異様に膨れ上がった筋肉を持つ体躯、犬歯は象牙の如き鋭さと長さを持ち瞳は黒く染まっている。人型であるため人間に見えるその怪物は、まるで産まれたばかりの赤子であるかのように、その異様な外形から不釣り合いなほどに不気味なほど大人しく、白目まで黒く染まった瞳でギョロギョロと見回している。


(………は?なんだよこれ)


 あまりに現実味のない光景が目に飛び込み、動くこともできずその場で立ち竦む。暫く経った後か、あるいは一瞬の内か、内在する時間の感覚すら曖昧になるほどの強烈な恐怖を前に、本能からかゆっくりと、音を立てぬように木を死角として視界の先の怪物から隠れるように後ずさる。


(早く…早く逃げないとヤバい…!)


 悲鳴を上げてしまいそうな程の恐怖を心の中でこらえながら必死に足を動かす。視界の端に怪物を捉えながら、瞬き一つせずに口元を震える右手で塞ぎながら息を殺していたが、焦りからか木の枝を踏み抜き音を立ててしまう。




「──────────!」




 目が合った。顔を向けこちらの姿を認識し、目が合った瞬間、時が止まったかのように、思考も体も硬直する。




「──────────」




「………ッ!」


 怪物がこちらを認識し、意識を向けたと同時に、硬直した体を無理やり動かしその場から走り去る。時が動くと同時に、体中からぶわっと吹き出る汗を拭う暇もなく、ひたすら遠くへ、遠くへと。


(なんだよアレ!なんなんだよアレ!?)


 理解不能な状況を拭い去るように足を動かし続ける。世を騒がせているコード・ホルダーの事件すら余所事のように思っていた最中、それを遥かに上回る異常な存在を目の当たりにし、追われているかもしれない恐怖。背後を振り向いている暇はないが、こちらを見たあの怪物の顔は網膜に焼き付いている。


(やばい、どこに逃げれば…もうすぐ表通りだよな…でもそっちに逃げたところで…)


 はあ、はあと肩で息をしながら、少しの間立ち止まる。全力で走ってきたからだろう、口腔は風化した岩のように錯覚するほどに乾き、肋間神経痛で胸のあたりが痛む。棒のようになった足を動かし、背後の闇に目を向ける。


 眼前にはただ真っ暗な夜景。人も、生物の気配すらない、深夜を過ぎた静寂が広がっている。先程の異常な光景は疲れからくる幻だったのだろうか、一瞬そんな考えが頭をよぎる。


「疲れてんのかな、俺…ん?」


「……」


 街の明かりが遠くに見える道から、そこから少女が現れた。街はまだ遠く、この付近には一軒家もアパートも少ない。


「えっと…君、どうしたんだ?」


「…………どうした?」


 少し不安げな表情で鎖骨あたりの服の襟をぎゅっと握りながら、オウム返しのような返答をする少女。


「ああ、だから…君、どっから来たんだ?そんな服装でこんなとこ出歩いて…」


「わからない…」


 小柄な見目からしても、少女は明らかに未成年であり、このような時間帯に外を出歩いているのは変だ。その辺をたむろしてる不良やバイト帰りの苦学生ならばあり得なくはないが、奇妙なのは彼女の服装だ。病院の検査着のような白い服を着て、カバンのような持ち物もない。


 そんな彼女がこんな郊外につながる道を一人で歩いているのはあまりに不自然であり、悠謳真ゆうまとしてはつい先程の件もあり、内心恐怖を覚えていたが、逆に先程の怪異を見たことで、心中に彼女を危険から遠ざけなければという使命感が生まれていた。


「…とにかく、こんなところに居ちゃ駄目だ。あっちには交番とかもあるから、ほら」


 なるべく優しく、諭すように声をかけながら少女の手を引こうとする悠謳真ゆうま、少女は警戒する素振りは見せず、ただ差し伸べられた手を不思議そうに見つめていた。少し間を空けた後に、少女は手を取る。


「……!?な、なんだっ!?」


 少女の手を握った瞬間、悠謳真ゆうまてのひらが眩く黄金色の光を放った。驚きのあまり、思わず尻もちをついて、そのまま少女を見やる。少女の周りには、今の自分と同じような青白く光るオーラのようなものが浮かび上がり、無風であるにも関わらず、真っ直ぐに伸びた長く真っ白な髪は揺れ、青い瞳は燦めいていた。


「………貴方が私のなの?」


 尻もちをついたままの悠謳真ゆうまと真っ直ぐ向き合い、無表情のまま語りかける。喜怒哀楽を含まない声色だったが、無感情であるというよりも、それに対してどういった感情を持てばいいのかを知らない。そんな気がする声だった。


「何を言って…?」


 少女の言葉の意味を計りかねていたが、彼女は気にしない様子で悠謳真ゆうまに近づいていく。彼女が近づくに連れて、悠謳真ゆうまの放つ光も強く、輝きを放つようになっていった。


「貴方に祝福を…」


「君は一体………」


 未知の光景が再び悠謳真ゆうまの目の前に広がっているが、先程の怪物へ抱いたような恐怖ではなく、むしろ得も言われぬ安心感のようなものが、まるで家族や親しい友人に抱くような、そんな感覚を目の前の少女に抱いていた。


「全てはのままに…」


「運命って……なっ!?」


 少女が悠謳真ゆうまの正面に立つと、おもむろに座ったままの悠謳真ゆうま肩に手を乗せ、突然額に口づけをした。あまりに予想外の行動に対する驚きと、気恥ずかしさから悠謳真ゆうまの顔がかあっと紅潮した。だが口づけをされた一瞬のうちに、そんな感情は一瞬にして遠くへ消え去るように、何かが脳内を駆け巡った。












 Aut dicta nesciunt et quod quia eos quaerat consequatur.








(なんだこれ…)





 悠謳真ゆうまの頭に突然流れ込んでくるモノ。それは知識よりも一つ次元の高いような、むしろ次元の低いモノであるかのように駆け巡る。





 Et consequuntur minus ab quasi voluptate et optio enim.






 全く見知らぬ記号の羅列が文字であると認識できるようになるには、または絵であると認識できるようになるようになるには、それらは知識だけでなく感覚、もっと言えば自分だけでなく他者や、もっと大きく捉えて社会がそれを認識できるようにならなくてはならない。





 At cupiditate quos sit sint minus qui quasi quia et ducimus praesentium ut atque doloribus ea exercitationem distinctio.






 これは、そういうものだと感じた。これを知る(認識する)(感知する)(意識する)ことは即ち、それを可能にするための真理アルケーだ。






 Vero delectus qui nihil illum cum eligendi nesciunt sit nihil nemo sed itaque neque et doloribus ducimus?






 それは既にこの世に存在していたにも関わらず触れることのできなかったもの。自らに内在していたにも関わらず行使できなかった権能。






 Qui odio quaerat non ullam iure ut rerum galisum quo deleniti dolorum quo ipsum voluptatem sed cupiditate dolorem est atque quia?






 一瞬のうちに終わり永遠の果てに始まる。






 Quo eveniet optio aut obcaecati natus aut iste sunt est accusantium velit.







 生と同時に終わり、死と同時に始まる。










『S Y M P H O N I C D R I V E』








 強い風が吹いた。現実には風など吹いてはいない。それは脳が起こした錯覚で、自分以外には感じられないもの。だが、それは確かに吹いた。


 眩い閃光と共に脳内を駆け巡る情報の渦、気づけば現実世界とは乖離した世界に居た。無重力であるかのように漂う自らと、文字のようにも見え、風景のようにも見え、世界のようにも見える、知識の塊のようなもの。正確にはそれは単なる錯覚であり現実の世界に自分は存在している。まるで濃縮された原液のような情報を脳内で咀嚼しようとするために、まるで別の次元に居るかのように感じているのかもしれない。


 すべてが透明になったような世界に、今彼女と。出会ったばかりで何も知らない彼女のことを、今では何故か古くからの家族のようにすら思える。宙に浮かんでいる半透明に透き通った彼女の、綺麗な青い瞳を真っ直ぐ見つめる。先程流れ込んできたもののせいか、見つめ合っている彼女の名前は、言葉を交わさずとも理解できていた。


 彼女はステラ、そう名付けられたはずだ。だけど彼女の本質は────彼女という存在は────


 ────『シンフォニック・ドライヴ』。それが彼女なのだ、そう思った。



 ──────────────────────────────────────



 はっと現実世界へと意識が戻され、悠謳真ゆうまは立ち尽くしていた。永い時の中を漂っていたかのような感覚だが、周囲の風景に変化はない、恐らく現実には時間として数秒にも満たない時間だったのだろう。


 先程まで目の前に居た少女────ステラはもう居ない。消えたのではなく、今自分の中に居る。正確には高い次元とでも言うべき別の場所で自分と繋がっている。彼女が言葉を発すれば、自分はそれを聞くことができるし、彼女が強く思ったことは自分に伝わる。


 突然このように異質な能力が備わった、というより備えられたという方が正しいか。だというのに悠謳真ゆうまは落ち着き払っていた。どうしてこのようなことができるようになったのか、原理すらも全く解らず、何故自分ができるのかなども何一つ知識としては有していない。だが作り方の判らない道具の使い方はわかるということが日常的に我々の身の回りでもあるように、おそらく問題なく使いこなすことができるし、それを疑問には思っても恐怖はしないだろう。


「これってコード・ホルダーの力か何かなんだよな…」


 意識を集中させれば、黄金色の淡い光のオーラが体を包む。掌をより意識すれば、光はより強く手から発せられる。


『それは貴方の持つ力…私によって発現したけど、貴方が本来持っていた力』


 ステラの声が脳内に直接響く。今までにない感覚だが不快感はなく、まるで天からの福音のように感じられた。


「俺にこんな力が…」


 掌を見つめていると、先程来た道からドスン、ドスンと鈍い地響きと紛うような音が聴こえてくる。


「──────────!!!!!!!!!」


 突如として閑静な夜の帳に似つかわしくない咆哮が轟く、先程見た化け物がこちらを追ってきたのか、それとも偶然さまよう中で自分を見つけたのか。


「…ッ!あいつやっぱり本物の…うわっ!」


 けたたましい叫び声を上げた後にこちらに突進してくる化け物に、手を顔の前で交差するように掲げ身を守る。化け物が眼前に迫るその瞬間、悠謳真ゆうまの目の前に障壁が現われる。身体に纏った光と同じ色で半透明に輝きを放ちながら、障壁は悠謳真ゆうまの背ほどの高さと、両手を大きく広げた程の長さで展開され、化け物を吹き飛ばし、のけぞらせる。


『この光は貴方の思い描いた姿に形を変える…それが貴方の力』


(これが俺の力…光は思い描く姿に形を変える)


 手の先に意識を集中させる。手のひらを見つめながら、そのまま目を瞑る。先程はこちらの意思に合わせて障壁が目の前に反り立った。ならば今度はあの怪物を倒す力を思い描く。


「──────────!!!!!!!!!」


 原始の世界、人類の祖先も棒や石を振り回すことは素手で外敵を葬るよりも余程効率のいいことは理解していた。それをもっと───人類が進化の過程で磨き上げてきたように───鋭利に、残酷に、より殺傷力の高い姿を想像する。


 激昂した怪物は先程よりも素早く、手荒く悠謳真ゆうまへと襲いかかる。だが集中力を研ぎ澄ませている悠謳真ゆうまは動じることなく神経を手元に向けている。


(………俺の想像力じゃこんなものしか出来ないけど)


 光を宿した悠謳真ゆうまの右手に、一振りの剣の様なものが握られている。眩い光を放射しながら現れたそれを、粉を振り払い押っ取るように握りしめ、そのままの勢いで、剣を持つ右手を左肩辺りにの高さに並行に、右肘が怪物を向くような構えで振り抜く姿勢を作る。


「これで充分だろ」


 カッと目を見開き、かなりのスピードで飛びかかってきた化け物よりも早く駆け、すれ違いざまに剣を振り抜く。燦然とした光が輪のように広がり、その中でも一層強烈な光の筋が怪物を横一閃に真っ二つに切り裂いた。赤黒い血が吹き出て、分離した両半身は筋肉の痙攣でピクピクと蠢いているが、やがてそれも終わり苦悶の表情を浮かべたままその生命活動を停止した。


 『シンフォニック・ドライヴ』の際に流れ込んできた情報が今身体と脳に馴染み、少しづつ氷解していった。自らのコード・ホルダーとしての力。光を操り我が物とするこの力はステラとので目覚め、ここまで強力なものとなった。


 朔光───『Fiat Lux』


 恐らく、それが自らの力の名前なのだろう。名前はそのものの本質を表す。逆説的に言えばそのものの本質を表していれさえすればどれだけ違う名で呼ばれたとしてもそれは正しい名だ。林檎を違う国の言語で表していてもそれは林檎であるという事実は変わらない。それは赤であり朱であり紅でありそれら全ては本質と相違ない。『知恵の実』や『罪の果実』と芸術的文学的に比喩を加えて表してもそれはこの果実の本質に瑕疵を与えることはない。


 頭に思い浮かんだ情報はきっとそういうもので、本質を表す一つの手段だった。身体を纏っていた光がその身から放射状に放たれて行き、その光が眼の前で収束し、傍らに少女が現われた。声をかけようとする悠謳真ゆうまだったが、少女はふっと目を閉じて前から悠謳真ゆうまに倒れかかるように気を失ってしまう。


「あっちょっと…」


 ふらっと倒れた少女を腕で支えながら、悠謳真ゆうまも虚脱感に襲われる。肉体の疲労もさることながら、頭に強烈な疲れを覚える。異次元での邂逅と能力を初めて使った影響か、先程まで考えていたことも忘れ、頭の中の想像や思考が黒く塗り潰されていくように、脳が縮小するような感覚と痛みを感じる。


(マズい、俺も………)


 疲労を意識しだした瞬間から、意識が遠のいていく。先程の怪物のことも、この少女ステラのことも、何も解らぬままこんな場所で意識を手放す訳にはいかない。だがそんな抵抗も虚しく、心地よい眠気が悠謳真ゆうまを誘う。


(駄目だ…もう…………)


 せめて人通りも車通りも少ない場所とは言え、往来の真ん中で倒れれば危険なため、せめてもの気休めに身体を引きずりながら、ガードレールの歩道側にある垣根にもたれかかり、ステラを抱えたまま道路の端で眠りにつく。


「───ああ、待機していた彼らをよこしてくれ。二人を介抱する必要がある、それとこの死体と痕跡の処理も……頼んだよ」


 そろそろ暁光が大地を照らすかという時間、眠っている二人の対面、車道を隔てた向かい側から男が電話で連絡を取りながらやってきた。


「何かあったときには直ぐに…と思ったけど、まさかこれほど強力とはね」


 恐らく一部始終を見ていたのであろう。無造作にまとめたパーマ気味な茶髪の青年は柔らかく微笑みながら穏やかな声色で一人つぶやいた。


「一先ず歓迎すべきかな、新たなコード・ホルダーの誕生…いや」


「大いなる覚醒を…ね」

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コード・ホルダー 現世の陰影 柳澤永松 @Yanamatsu

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