03


【Day 0】


 

 僕はそう、うっそりと思う。本当は気付いて居た。絡みつくような視線を、ずっと前から。国木田さんに写真を見せて貰った時、嗚呼此の人だと理解したのだ。僕は此の人に見られている。此の人に囚われたのなら何て素晴らしい事だろうと。だからこそ。僕は道にはぐれた振りをして、路地裏を不安そうな表情を作って歩いて居たのだ。恐る恐ると云った風に周りを警戒する振りをして、背後から近づく気配を敏感に感じる。然う、感じていたのだ本当は。敢えて振り向いてなんてあげなかったけれど。どうせ貴方は知っているのでしょう。やっと僕が異能力を何とか使いこなせるようになった事。どの位の力が出せるかって事位。ポートマフィアの情報網はずば抜けている。それに双黒と呼ばれる太宰さん、貴方なら。確かに中原さんの能力も厄介かつ強力だ。けれど本当に恐ろしいのは、その頭脳だ。的確に相手の力量を見分け、瞬時に判断を下すことの出来る、其の頭脳が。其れが僕だけに向けられて居るだなんて、何て幸せな事なのだろう。

 カツン、コツンと僕は自身の靴音を響かせる。貴方が僕の背後を簡単に取れるように。さあ僕は上手く演じる事が出来るかな。愛しい貴方の前で、貴方に怯える可哀想な小鳥を。逃げようとして、風切羽を切るぞと脅されて、恐る恐る従うしか無い可哀想な人質を。それから先はどうぞご自由に。どうせ貴方はその先をも描いているのでしょう?




 けれどもし。

 僕に飽きたのなら其の時は。



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ぼくらの監禁生活 神宮要 @zinguukaname

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