第2話
*
『隣の席の読書好きな彼女が大好きな僕と、それを知らない君 』
第一話 絶対誰にも、内緒だから
作者:dai-chi
僕の名前は
でも僕は恋愛の気持ちがわかんないから、好きって言われて適当に「うん」っていうと付き合ったりしました。でも僕がその人のことを好きじゃないから、その彼女になった人は僕に「別れて」とメールを打って、僕はそれで良かったです。
僕は中学校二年生の時に今の学校に転向してきました。僕の母さんの仕事のせいです。おばあちゃんの家に引っ越して、お父さんは東京に一人で住んでいるけれど、お母さんとは仲良しなので、僕はいいです。それでも。
僕が転校してからも僕は好きと言われたら付き合ったりしましたけど、その人のことは好きじゃないから、また別れました。僕は誰のこともまだ好きになったことがないです。
でも、ある日、中学三年生になった時、僕は本ばっかり読んでる隣の席に座っているクラスメイトが気になりました。本は僕はあまり読みません。本ばかり読んでいるその人を僕は気になりました。
僕がその人に話しかけたいけど、なんと言って声をかけていいか僕はわからないから、僕は困ってしまいます。本を読んでるその人の邪魔をしてしまうからと、僕は声はかけれません。
でも僕が誰も好きになったことがないから、本を好きな人が好きかもしれなくても、僕の気持ちは言えてません。僕の気持ちが好きだとその人は知りませんけど、僕はその人が好きだと思ってしまいます。
どうしたら僕はその人に、話ができるかが分かりません。僕のこの気持ちは好きということかもしれないと、どうしたら僕は言えるようになりますか。そんな僕の物語はまだ始まったばかりです。
*
――ふう、なんとか、書き終えた。
僕は集中して、第一話を書き上げた。これをもしも小宮さんが読んでくれたら、僕の気持ちに気づいてくれるだろうか。あとは、この文章のおかしなところを、何度も何度も読み返し、誤字脱字を見直して、公開すればいい。僕は公開ボタンの横の保存をクリックし、もう一度読み返そうと思い、ノートパソコンのパッドに指を移動するため、マウスから手を離そうとした。まさにその瞬間、僕のすぐ後ろから声がした。
「へぇ。やるじゃん」
「うわぁあ! 」
僕が驚いたそのはずみに僕の指は反射的にマウスをクリックし、その第一話が公開されたとパソコン画面が切り替わった。
「嘘だろ? え? ちょ、……」
「夕ご飯は後でって言ってたから、まだかなって思って呼びに来てあげたんだけど、へぇ、大地小説書いてるのね」
「いや、あの、これはちょっと事情があって違うっていうか、って、母さん! いつから僕の部屋に……?」
「え? もうかれこれ五分前くらいから?」
「見てたの?!」
「まぁ、見えるよね、パソコンの画面はこっちに向いてるし、大地は背中向けて一生懸命キーボード打ち込んでるし? 覗こうと思えば、……ぷっ! それにしても、くくくっ。うん、いいと思うよ」
「何がいいんだよ! ノックしてよ」
「したけど、返事がないんだもの。集中してたんでしょ? わかるわかる。私も小説書いててのってる時、他のこと見えなくなるし」
「もう、いいからあっちいってよ! すぐ下降りてご飯食べるから!」
「はいはーい。がんばってねぇ。ふふふ」と母さんはウキウキしながら僕の部屋の隣にある自分の部屋へと消えていった。僕はその姿がちゃんと母さんの部屋の中に消えるまでドアから顔を出して確認した。そして、またパソコンに戻り、公開を取りやめようとした。
したけれど。
「うそ……」
更新したばかりの第一話のPV数が公開する前よりも「1PV」増えていた。
「まさか……」
小宮さんが読んでしまったのだろうか。時計を見ると夜の十時半だった。確か、小宮さんの通っている塾は、クラスで一緒の班の田中と同じだから、夜十時までのはずだ。確かに今日は塾の日だ。僕の身体からさぁっと何かが引いていくのがわかった。クーラをつけているけどそのせいじゃない冷たさが、喉から胃に落ちる冷たい麦茶のような感覚で僕の中を流れ落ちてゆく。
「あっ……そうだ、公開を下書きに戻せば」
僕は急いで、第一話をクリックし、もう一度下書きに戻そうとした。でも焦って別のボタンを押してしまった。画面が僕のトップページ代わり、右上のベルのマークが赤く光っている。こんなことは今まで一度もなかった。だって、誰にも内緒で書いている僕の小説を見ているのは、小宮さんだけなんだから。多分だけど。
僕はその赤く点滅しているようなベルマークをクリックしてみた。
「うそだろ……?」
そこには、〈 Akomi 〉というアカウントの人が僕の第一話に応援ボタンを押して、コメントを書いてくれている通知があった。
《 続き、楽しみにしています! 》
「まだ、文章めちゃくちゃなんだけど……」
僕は顔から火が出るとはこのことかと思った。まだ文章におかしなところはたくさんある。それは僕でも、さすがにわかる。中学三年生ともなれば、日記、作文、記述問題などそれなりに文章を書くことを経験しているからだ。こんなめちゃくちゃな、自分の書きたいことをまず書いたような文章を読んだらきっと、小宮さんは僕のことを好きどころか嫌いになってしまうかもしれない。なんたって小宮さんは読書が好きな女の子なのだから。
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