(4)
アイラナが警官から聞き出した場所には、ひときわ強く青い光を放つ、大きなスライムのビルディングがあった。
スライムのビルディングの表面には、フトゴース人の泡立つような文字が浮かび上がっていた。アイラナほどフトゴース人の言葉が堪能でないタケルは、「
タケルは、アイラナに導かれ、ビルディングの入口の役割を果たしている、スライムの壁を潜り抜けた。壁のぴりぴりする感じは、これまでタケルが通ったどのスライムとも異なっていた。
ビルディングの中には、多くのフトゴース人がいて、忙しそうにしていた。規律のとれたその動きは、彼らが何らかの専門技能を有するプロフェッショナルであることを示しているように思えた。
(軍人か? いやいや、悪い想像は、よすんだ。)
アイラナは、そのうちの一人を捕まえて、フトゴース人の言葉であれこれと話しかけた。そして、フトゴース人たちとの話を終えたアイラナは、入口の壁と反対側の方角を指さした。
「その先をまっすぐ行った先にある、すみれ色の札を提げた部屋だって。タケル、騒がしくしないでね」
「わかった」
アイラナが指した方角には、淡く光る何枚ものスライム壁があった。妻を信じて愚直に壁をくぐり続けたタケルは、四枚目の壁をくぐったところで、ようやく、すみれ色の札を掲げたスライム壁を見つけた。
そのスライム壁は、これまで通り抜けたどのスライムより明るく清潔だった。タケルは、ただならぬ気配を感じ、一瞬、躊躇した。それでもタケルは、息子を愛する父親だった。彼は、メーリに教わったまじないを、口の中で唱えた。
「シェフェリ・シェ、シェフェリ・シャ」
まじないで不安が和らいだタケルは、眼前の壁を通り抜けた。通り抜けたタケルは、大小数名のフトゴース人に囲まれた寝台にトムが横たわっている有様を目にした。
トムは、首から下の全身をスライムに覆われ、目を閉じていた。そして、そのすぐ傍らには、すみれ色の身体をした、大柄なフトゴース人が立っていた。
トムの傍らに立つフトゴース人は、トムを覆うスライムに手を伸ばし、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます