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 アイラナが警官から聞き出した場所には、ひときわ強く青い光を放つ、大きなスライムのビルディングがあった。

 スライムのビルディングの表面には、フトゴース人の泡立つような文字が浮かび上がっていた。アイラナほどフトゴース人の言葉が堪能でないタケルは、「中央central」に相当する語と、「致命的critical」に相当する語が含まれていることまでしか読み取れず、ますます不安になった。

 タケルは、アイラナに導かれ、ビルディングの入口の役割を果たしている、スライムの壁を潜り抜けた。壁のぴりぴりする感じは、これまでタケルが通ったどのスライムとも異なっていた。


 ビルディングの中には、多くのフトゴース人がいて、忙しそうにしていた。規律のとれたその動きは、彼らが何らかの専門技能を有するプロフェッショナルであることを示しているように思えた。


(軍人か? いやいや、悪い想像は、よすんだ。)


 アイラナは、そのうちの一人を捕まえて、フトゴース人の言葉であれこれと話しかけた。そして、フトゴース人たちとの話を終えたアイラナは、入口の壁と反対側の方角を指さした。


「その先をまっすぐ行った先にある、すみれ色の札を提げた部屋だって。タケル、騒がしくしないでね」

「わかった」


 アイラナが指した方角には、淡く光る何枚ものスライム壁があった。妻を信じて愚直に壁をくぐり続けたタケルは、四枚目の壁をくぐったところで、ようやく、すみれ色の札を掲げたスライム壁を見つけた。

 そのスライム壁は、これまで通り抜けたどのスライムより明るく清潔だった。タケルは、ただならぬ気配を感じ、一瞬、躊躇した。それでもタケルは、息子を愛する父親だった。彼は、メーリに教わったまじないを、口の中で唱えた。


「シェフェリ・シェ、シェフェリ・シャ」


 まじないで不安が和らいだタケルは、眼前の壁を通り抜けた。通り抜けたタケルは、大小数名のフトゴース人に囲まれた寝台にトムが横たわっている有様を目にした。


 トムは、首から下の全身をスライムに覆われ、目を閉じていた。そして、そのすぐ傍らには、すみれ色の身体をした、大柄なフトゴース人が立っていた。

 トムの傍らに立つフトゴース人は、トムを覆うスライムに手を伸ばし、うごめかせていた。

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