(4)
「ハーイ、タケル。お待たせ」
メーリは、いつもの陽気なトーンで、通話を再開した。そのことが、タケルを少し落ち着かせた。
「いえいえ、急かしてしまったようで申し訳ございません。何かわかりましたか?」
「それがね、シュシュパシュおじさんから逆に聞かれちゃったのよ。パシュシュシェちゃんがどこにいるか知らないかって。あの娘もまだ帰ってないみたい」
タケルは、今度こそ愛想笑いを崩しそうになった。しかし、ヤクザに取材した若いころに彼の身を守ったその精神力が、彼の愛想笑いを鉄壁のままに保った。タケルは、いつものトーンを保つよう努めながら、会話を続けた。
「それは、シュシュパシュさんも心配でしょう。居場所の心当たりについて、何かおっしゃられていましたか?」
「うんうん。それを話そうとしていたの。もしかしたら、本土のシャパパパシュおじさんのところかも知れないって。パシュシュシェちゃんがこの頃よくおじさんの話をしてたんだって。前は、シャパパパシュおじさんはスキンシップが激しすぎる人だって嫌ってたのにね」
「息子は、彼女と仲がよかったから、一緒かもしれませんね。もう遅い時間ですから、私が本土まで迎えにいきます」
息子に何かあるはずがない、妻もそう言っていた。まして息子は、地元の有力者であるシュシュパシュの愛娘と一緒なのだ。息子は、絶対に、大丈夫だ。
だが、メーリの話は、終わっていなかった。
「ところで、タケル。最近のトムくんの様子について、何か気づいてた?」
「おや、何のことでしょう?」
「トムくん、ときどき胸を押さえて咳き込んでたんだって。パシュシュシェちゃんがチャーミングだって褒めたから、シュシュパシュおじさんが、それは地球人が苦しいときのしぐさだから、優しくするようにってたしなめたんだって」
タケルは、今度こそ自分を制御できず、コーヒーカップを取り落とした。やわらかい床がカップを受け止め、スライム状の清掃器がこぼれたコーヒーを吸い込んでいった。
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