(3)
タケルは、頭に浮かんだ疑問を端末にぶつけた。
「適切な待遇とはなんだ。なぜ息子からの通知が届かない!」
『適切な、待遇、について、蝕のため、対象者端末、との、交信を、行えません。よって、詳細な、情報を、取得、できません。最後の、交信、について、調査を、進めます。しばらく、お待ち、ください』
『長距離、交信は、姉の月を、中継、しています。蝕のため、フトグーイ、全域、で、通信障害が、起きて、いますこと、を、お詫び、申し上げます』
窓の外では、「姉の月」がますます欠けていた。「姉の月」が「弟の月」に完全に隠される第2接触が、近づいていた。
タケルは、ますます不安になった。
月を中継するような通信が必要になるようなところまで息子が遠出することを、タケルは、想像できなかった。タケルは、自宅があるエリア内での通信であれば、地上に設けられた設備を中継すれば足りることを知っていた。
また、タケルは、取材を通して、タケルたちの家が、防疫と保安上の見地から、ある種の出島にあることを知っていた。だから、フトゴース人たちが住む「本土」との通信であれば、月を中継することもあるだろう。
しかし、タケルは、息子が遠く離れた本土まで行く理由を思いつかなかった。トムは、若いころのタケルのような、遠出して遊び歩く不良息子では、ないはずだった。
考えがまとまる前に、端末がその身を震わせた。
『メーリ、様、からの、映像、通話、要求が、あります。おつなぎ、しますか?』
「つないでくれ」
タケルは、深呼吸しながらネクタイを締め直し、仕事用の表情に切り替えた。
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