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地球人が、粘液状生命体であるフトゴース人たちとのファーストコンタクトを行ってから3年の歳月が過ぎた。フトゴース人たちの愛くるしい容姿(大昔のゲームの「ダブラン」というキャラクターに似ているらしい。)や温和な性格の助けもあり、ファーストコンタクトは、
しかし、地球人とフトゴース人は、見た目の透明度も、手のひらのしっとり感も、地球的な衣服の有無も、日常用品のぬめぬめ具合も、まるで違った。あまりにも異なる二種族の関係を進めるには、お互いをもっと知ることが必要だと、誰もが思った。
フリーランスの記者であるタケルがフトグーイへの長期滞在許可を取れたのは、そういう事情だった。
タケルが、ツバル出身の妻アイラナと、その妻との間に設けた息子のトムと一緒にフトグーイへ行きたいと申請したことも、出入国管理局の審査で有利に働いた。日本とツバル、複数の文化圏に属し、安定した家庭を築いているタケルなら、地球人と異質なフトゴース人についても、よい記事を書けるだろうと判断されたのだ。
タケルは、思い付きでフトゴース人を取材しようとしたわけではなかった。彼は、ファーストコンタクト後に活動を始めた任意団体からの依頼と支援を請けて、フトゴース人の「本当の姿」を探りに行くことになったのだ。
フトグーイについてから半年間、タケルは、精力的に取材を続けていた。タケル一家のフトグーイ入国を許可した出入国審査官は、鼻が高かった。もちろんタケルの意図と、審査官の意図とは、大きく違っていたけれども、その違いは、出入国管理局の書類に数字として書かれるようなものではなかった。
タケルが取材を半年間続けている間に、妻アイラナは、小さな貿易会社のオーナー兼経営者となっていた。フトグーイでは、アイラナが地球から持ち込んだ固くて乾いた品がちょっとしたブームになりつつあった。
タケルの妻は、物怖じしない性格と人懐っこさで、フトグーイに多くの友人を作っていた。
トルコ出身の人文学者メーリも、その一人だった。彼女に頼まれて、アイラナは、フトグーイで作られたぬめぬめした品のいくつかを地球に紹介した。すぐに、まとまった量の取引を行えないかとの問合せが何通も彼女のもとに届き、アイラナとメーリを驚かせた。
アイラナは、メーリに感謝し、彼女の会社の取扱品目にフトグーイ産のぬめぬめした品を加えた。固くて乾いた品とぬめぬめした品との交換は、日に日に増えていった。会社の業績も、どんどん成長した。
タケルの妻の貿易会社は、審査官の期待通り、地球人たちとフトゴース人たちとの相互理解を深める架け橋となりつつあった。
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