幹部との戦い
真っ白に染まる視界。光がゆっくりと消えていき何とか見えるようになると、そこは別の場所だった。
近くの窓から外を確認する。相当上の階に移動させられたらしい。外を歩く人々が人形のように小さく見えた。
「何階だよこれ……」
「四十階よ」
「へぇ、そりゃ高いな……ってお前誰だよ!!」
突然背後に現れた少女。年は俺より上だろうが、そう離れているようには見えない。
(というかここ三十階建てじゃなかったのか。目算なんて案外当てにならないな)
「初めまして、私は海塚雫(かいづかしずく)。君たちが探ってる組織で幹部をしてる者よ」
「幹部……?」
「そう……私は幹部に選ばれた。そしてある任務を与えられた。相坂嶺緒!あなたの実力、確かめさせてもらう‼︎」
その言葉を合図に、海塚は二本のナイフを手に距離を詰める。
「問答無用かよ‼︎[火陽・火の護法・炎壁]」
陰陽術を使い、彼女との間に炎の壁を作り出す。
同時に太もものホルダーから杖を取り出して構える。この杖は学園からの支給品だ。魔獣の骨を素材に作られていて、魔力の操作を助けてくれる。これのおかげで慣れない魔術も高い水準で行使できるようになった。
「[水陽・水の功法・水鞠]」
続けてバスケットボール程の水玉を生成する。数は三つ。タイミングをずらしながら左右に放った。
「緩(ぬる)いよ」
彼女のナイフは炎を薙ぎ払い、水鞠をも両断した。
「まだ終わってないぞ![土陽・土の功法・土矢]」
間髪入れず繰り出した土の矢は頬を浅く裂いた。
が、それだけでは動きを止めることはできなかった。首元に向かってくるナイフを杖で受け止め、力づくで押し返す。
「見かけによらずいい腕力してるのね」
「そりゃどうも。何ならこのまま引いてくれると助かるんだけど?」
「それは無理な相談ね。と言っても、あなたがこの程度の実力ならすぐに帰れそうだけど……」
「言ってくれるね。随分と自信があるみたいじゃないか」
「フフッ……一つ忠告しておくわ。これからは私の攻撃を受けないことに尽力しなさい。死にたくないならね」
彼女は不敵な笑みを浮かべながら、先ほどと同様にナイフを振りかざす。
全く同じ軌道で首元に向かってくるナイフを、反射的に杖で受け止め__られなかった。
「ッ!?」
ナイフは杖を容易く両断し、首筋を掠めていった。
幸い薄皮一枚で済んだようで出血はほとんどないが、先ほどとは桁違いの切れ味には驚いた。
「理解できたかしら?どうやったかは……分からないでしょうけどね」
(いいや、よく分かったよ)
今海塚が使っているのは俺がよく知っているもの、前世で師匠から教わった魔術だ。
どうして彼女があれを使えるのかは分からないが、俺は対処法もよく知っている。
再度向かってくる刃を俺は素手で掴んだ。
「なっ!?」
振り解こうとする腕を、俺は離さなかった。
使った魔術は二つ。一つは刃物による影響を緩和する《防刃》。もう一つは《斬鉄》の
片方だけでは足りないが、その二つを揃えればもう怖くない。追加で何かしらの魔術を行使されない限り、握り込む手の薄皮すら切れることはないだろう。
「これで終わりだ!」
ナイフごと腕を引き寄せ、バランスを崩した彼女の脇腹に拳撃を打ち込む。当然この一撃も《衝撃増加》で強化している。意識を刈り取るには充分な威力になっていた。
「全く……なんなんだこの女は」
ゲート・ジ・アース:記憶残存IF 水咲雪子 @Yukimura_Haruto
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