2‐50皇后の懐妊
桜だけではない。梅が綻べば紅葉が錦を織りなし、紫陽花も青い
春夏秋冬が取りまく水晶宮では皇后である
「皇后陛下、ご報告いたします。
冬の宮の女官は報告を終え、低頭してさがる。続けて、後ろに控えていた秋の季宮の女官が袖を掲げながら前に進む。
「
「そう、お疲れ様」
欣華は微笑んで、ふたりを退室させた。
皇后の息が掛かったものはあらゆるところにいる。春宮、夏宮、秋宮、冬宮だけにかぎらず、宮廷の端々、果ては都にまであますところなく。彼等は絶えず、欣華の眼となり耳となり脚となっていた。
だから、欣華が知らないことは、ない。
飾りつぼには梅や萩と一緒に
「
欣華は枝垂れた雪柳を握り締めて、ぐちゃぐちゃにもぎ砕いてしまった。大理石の床に名残雪のような残骸が散る。
「廟は
ついでに神様の声を真似て、愚かな秋妃にささやきかけてあげた。毒疫に蝕まれたものたちに薬をあげてはどうか。
「そうしたら、宮廷官巫まで滅んでくれた。ふふ、ぜんぶ、妾の想ったとおりに踊ってくれて、なんていい
現在の宮廷官巫は異能を持たないが、昔は有能なものがいて、ほんとうに天地神明の声を聴いていた。だが、またいつ、そのようなものが現れないともかぎらなかった。危険なものは根から絶つにかぎる。
「さあ、これで舞台が整ったわ」
皇后は微笑んで、微かに膨らんだ胎をなでる。
…………
その朝は後宮に
「皇后さま、奇蹟です。ご懐妊なさっておられます――――」
程なくして、皇后の懐妊が公表された。
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お読みいただき、ありがとうございました。
ここで七部は完結です。秋ごろには八部の連載を再開したいとおもっています。ちょうどここからメディアワークス文庫から出版されている「後宮食医の薬膳帖4」につながりますので「早く続きを読みたい」とおもってくださった御方がおられたら、ぜひとも「後宮食医の薬膳帖4」をチェックしていただけると嬉しいです。
ここまでご愛読いただきまして、重ね重ねになりますが御礼申しあげます。
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