2‐34新たな毒の簪を贈る
桜が舞っていた。枝からは新たな芽吹きが始まっている。
議場を後にした
「ほんとうにどういうつもりなの、おまえ」
睨みかえせば、
「可愛げがないね。こういう時くらい、
「願いさげよ。おまえは可愛げのある
「は、違いないね。僕は可愛げがなくて、可愛い
振り払おうとした慧玲を鴆は壁に追いこむ。壁に腕をついて、慧玲を捕える。
「あれだけ大勢の
議場にいなかったのに、何処から聴いていたのか。あるいは盗聴するための蟲でもいるのだろうか。
「これを渡そうとおもってね」
鴆がある物を差しだしてきた。
「
咲き誇る
「葩ごとに違う毒を練りこんである。これだったら必要な時に取りはずしても、気にならないはずだ」
鴆から前に贈られた簪は毒による飢えを鎮めるのに壊してしまった。とても残念で、未練があったのだ。でも、新たなものがほしいと頼むことはできずにいた。
思いも寄らなかった贈り物に鼓動が弾む。
「嬉しい。でも、ほんとうにもらっていいの」
「あんたのために造ったんだよ」
鴆は穏やかな微笑をこぼして、結いあげていた髪に挿してくれた。確かめるように触れると、たまゆらに風が葉を奏でるような
「壊れたら、何度でも僕が造ってやるよ」
「ありがとう」
慧玲は硬い
鴆が紫の双眸を緩める。瞬きを経て、慧玲はまた張りつめた真剣な眼差しになる。患者のもとにいかなければ。
鴆は彼女の決意を察して、身を退いた。
「いっておいで」
銀の髪をなびかせて、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます