2‐22後宮の廟の謎にせまる
この
だが、ここは墓ではない。
廟からはこれまでもいくつか、
だが、骸が収まっていたものはない。
ならば、石棺のようなものは棺ではなく、食物等を収める櫃ではないか。そう唱える研究者もいた。この廟は
この廟は、なにを祀っているのか。神話を研究する学者として、たまらなく探究心がそそられた。
…………
崩れかけた階段をおりたさきには祭壇があった。
祭壇には石棺がおかれている。これまで発掘されたものとは違って、側面には彫刻が施され、解読できないが碑文まで彫られていた。
蓋は崩れており、なかはもぬけの殻だ。
「ほお、これは
昂奮して、彼女は声を張りあげる。
「そち、この棺の紋様を複写せよ」
側にいた宦官に命令する。宦官は承知しましたと紙を拡げ、石棺の紋様を描き写していった。
「
「壁画だと!」
調査隊が松明をかざす。
壁は赤い紋様で埋めつくされていた。
絵のほかに古代言語らしきものもある。絵の一部は
後に残されたのは複写を命じられた宦官だ。
彼は松明をかざして、なにげなく石棺を覗きこむ。蓋の残骸にまざって松明の光を映射するものがあった。
「ん、なんだ、これは」
拾いあげる。白い石の塊だ。なかには男のこぶしほどはあろうかという金塊が埋まっていた。
金鉱石だ。
宦官は欲に眼がくらみ、ごくりと唾をのむ。
皓梟に報告しなければ。遺跡のなかにあるものを持ちだすのは禁だ。だが、これがあれば宦官を辞めて都に隠遁できる、それどころか死ぬまで遊んで暮らせるだろう――
宦官はわきあがる欲望を抑えきれず、金塊を懐にいれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます