2‐16皇帝の倚子は地獄の底にある
宮廷では男たちが廻廊の端に身を寄せて、ひそひそと昏い声を重ねていた。後宮の華ばかりが、噂をするわけではない。表立っては
先だっては、
「皇太子が
「軟弱な。
「これだから、宮廷で育ってもいない
「大帝国の恥だ」
皇后につかえる
その時だ。鴆がちょうど、宮廷の廻廊を通りがかった。
鴆の姿をみて、男たちは聴かれていなかっただろうかと息をのみ、緊張する。
「皇太子様、
先程までとは裏腹な態度で、
「
鴆は愛想よく微笑んで謙虚な言葉をかえす。
(せいぜい、僕のことを侮っていてくれ)
(操りやすい
ひとつは目障りな高官たちを失脚させるための汚職の証拠だ。
もうひとつは――――
(皇帝になど、なりたいものか。
そう理解していながら、彼は
臆するか。なおも笑うか。
(僕が欲しいものはただひとつだ)
風が吹き渡る。ふせていた視線をあげれば、黄昏の
皇后のもとに急がなければ。
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