2‐11薬としての誇りと気魄
「女の
「
怒気を剥きだしに凄まれてなお、
「そして、あなたさまは患者です」
「俺が患者だと?」
震えていた
「
「僕は、助けないよ」
にべもなく、
「なっ、なんで」
「彼女は薬として
「そんな……」
「それに」
鴆の眼差しが一瞬だけ、やわらいだ。
「彼女は、あんなつまらない男に殺されはしないさ」
喉に剣を突きつけられながら、慧玲は朗々と声を張りあげた。
「医のあるところに
医を語る
「箸を」
側近は戸惑いつつ、王に箸を差しだす。
臭みもなく旨みの風味だけを湛えた
「……うまい」
想わずといったように言葉が、落ちた。
弾むような食感の
魚と帆立の
彼は鯛の素揚げに箸を伸ばす。
だが、その箸がとまった。察するに、過去には揚げ物でも、発疹や喘鳴などがあらわれたことがあったのだろう。
「畏れながら、穀物に敏感な患者様には種子である
「……わかったよ」
腹をきめたように蜃王が素揚げを口に運ぶ。
きれいに揚がった鯛は
「は……」
「これだよ、俺はこれが食いたかったんだ」
宮廷の食は穀物、
この鯛もほんとうならば、
海を離れ、遥々と宮廷にきた蜃王にとっては、欲してやまなかった故郷の味に違いない。持参して庭で焼いて食べていたとしても、せいぜい魚の
かみ締めたあと、彼がぽつとこぼす。
「ここまで旨い鯛は、蜃でも食ったことがないな」
あとは諸症状があらわれないかどうか、だが――
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