2‐9宮廷風鯛だし拉麺!?
春の月は
後宮から宮廷に渡された橋のたもとで、
「貴女の推測どおりだよ。宮廷の庭で火を熾して調理をしていた痕跡があった。木製の串が落ちていたが、このあたりにはない植物でつくられていた。どう考えても
そもそも、宮廷の庭でたき火をしようなんて考えるような非常識なものはそういない。
「今晩の夕食は終わったの?」
「これからだよ」
まだ
「私が調理する。宮廷の
「わかった。ほかに要るものはなにか、あるかな」
「鍋、まな板、庖丁、調理器具一式を新調して」
「
…………
「よい鯛ですね」
張りのある真っ赤な魚を、真新しいまな板に載せる。
鯛の眼は
「まずは鱗落としをお願いできますか」
慧玲は鍋に湯を沸かしつつ、側らにいた
「えっ、あっ、はい」
「どうかしましたか?」
「ち、違うんです、なんでもないですよ、あはは」
先程から藍星の様子が変だ。
動きが硬くて、かくついているというか。愛想笑いばかりしているというか。
朝から無理をさせているせいだろうか。
「こんな時間帯から働かせてしまって、ごめんなさいね」
「そ、そんなそんなっ、とんでもないです。喜んで、働かせていただいていますから、お気遣いなさらないでください、へっへっ」
どう考えても挙動不審だが、藍星は意外にも切替えがうまく、調理の補助はてきぱきとしていた。
鱗を落とした鯛から鰓などを取りのぞき、さばいていく。
この処理をすることで、臭みが落ちる。
本来は塩だけではなく酒も振りかけるのだが、敢えて酒はつかわなかった。
ここから、さらに旨みをひきだす。
網におき、直火で
「うわあ、いいにおいがしてきましたね」
「こんがりと焼きめがついたら、煮だしましょう」
さきに昆布でだしをとっておいた。
「続けて、
「これを組みあわせるんですか?」
「そうですよ。いま、調えているのは
「わわっ、拉麺ですか!」
藍星がきらんと瞳を輝かせる。
「ただし、麺はこちらをつかいます」
慧玲が取りだしてきたのは細い
「
藍星が意外そうにする。
「
「ご心配なく。豆だからこそ、食べてくださるはずです」
慧玲は胸を張って微笑んだ。
「さて、そろそろ揚げ物の調理に移りましょうか」
拉麺に後乗せするため、残しておいた鯛の身を揚げる。ただし、鍋には宮廷でおもにつかわれている
「黄緑がかっていて、きれいですね」
「
揚げ物、素湯、麺が一緒にできあがるよう、調理時刻を考えながら動き続ける。茹であがった麺に透きとおった鯛の
最後に
宮廷料理と遜色のない品格ある
「調いました。熱いうちに運びましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます