2‐7食なくして人は非ず
「ああ、実はそれについて、
「この国は毒の飯しかだせないのか――そういったきり、彼は箸をおき、杯をかわすことも拒絶している」
いかに豪華な食を振る舞おうとも、彼の態度は変わらなかった、と鴆は続けた。
「毒……ね。まさか、
「可能性がないわけではないが、かぎりなく低い。
毒疫については
今後のことを考えれば、
「こちらとしては、
「どういった条約なの」
「大陸から
剋は大陸を統一したが、海を統べるのは蜃だといわれている。これは蜃が南海の領海を統轄するほか、
資源はともかく、
「
「また、この条約を通じて
「かといって、不必要に譲歩して契約を結んでもいけない。皇帝の死後、
はったりだとしても、今後よけいな戦争を避けるためには必要なことだ。
「蜃にとっても、この条約を締結すれば、利するところがある。だが、海路をあけ渡すことで、こちらが条約を反故にして蜃に侵攻、もしくは鉱物を奪うのではないかと疑われているわけだ」
まずは
「食なくして人は
それは、
「
その理念に基づいて、慧玲は様々な難事を乗り越えてきた。食を通じて、こちらの誠意を表すことができれば、頑なに拒絶する
「わかった。私が食を調えましょう」
それにしても、妙だ。
七日飲まず食わずであろうはずがない。戦争の時に持っていくような食物を持参しているのかもしれないが、それにしても調理は必要だろう。
「蜃王の連れてきた者たちが宮廷の
「いまのところは確認できていないね。宮廷の庖房には衛官もつけているから、おそらく立ちいることはできないはずだ」
「蜃王いわく、宮廷の庖房で造られたものなんか、食えない――そうだ」
慧玲が考えこむ。
蜃王の指は酷く荒れていた。掃除や洗濯にかけまわっている女官ならばまだしも、身分のある男があれほど荒れた手指をしているものだろうか。それに女の化粧を過剰にいやがるあの言動。趣味嗜好の問題ではなかったとすれば――
慧玲のなかにひとつの答えが導きだされる。
「庭で火を焚いた痕跡がないか、すぐに確認して」
「宮廷の庖房で調理したものは食べられない、毒の飯ばかり。あれは挑発ではなく、言葉通りの意味かもしれない」
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