2‐2熱風邪には白菜と大根
季宮は
「
「
慧玲は小鈴に声をかけてから、診察をする。
酷い熱だ。舌診をしたところ、赤みを帯び、細かなひび割れができていた。高熱が続いているせいで、身のうちに流動する
続けて問診に移る。
「熱があがるまえに異様に寒かったり暑かったりはしませんでしたか」
「そういえば、妙に暑くて……おかしいなと、おもっていたのですが、そのときは熱もなかったので。まさか、
「承知しました。おつらかったでしょう。お楽になりますから、ご安心くださいね」
「ありがとうございます」
小鈴が頭をさげた。経験したことのないような高熱が続き、心細かったに違いない。
李紗もそうだったが、慧玲がきた、というだけで患者たちは安堵の表情を覗かせる。それほどに信頼されているのだ。裏切るわけにはいかない。
「
「いえ、李紗嬪と違って小鈴様は
「ええっ、そうなんですか!」
がびぃんとなって、藍星がつぶらな眼をさらにまんまるくする。
「
「確か、風邪のときは大抵が
「よく勉強していますね。そのとおりです」
敬愛する慧玲に褒められ、藍星が一転してえへんと胸を張る。
「そもそも、
「まずは大根や大根の葉、白菜をきってから、塩を振り、揉んでしぼります」
「了解です」
大陸では、
「大根と白菜には余分な熱を解き、臓の、とくに肺の乾きを潤す効能があります。こちらを、昨晩から煮こんでおいた鶏がらのだしに浸し、細かく刻んだ昆布と一緒に漬けこみます。最後に胡麻を散らすので、白胡麻を炒っておいていただけますか」
「承りました。この昆布にはどんな効能があるんですか」
「大根と白菜とおなじく熱をさげますが、微々たるものですね」
「それなのに、いれるんですか?」
「いかに効能があろうと、口に旨くなければ薬ではありませんから」
隠し味ですよと微笑みかければ、藍星はなるほどと瞳を輝かせた。
しばらく経って、薬ができあがる。
「大根と白菜の
小鈴は
まずは大根をひとくち。ぱりっと心地のよい音が弾け、熱にうかされていた小鈴の眼がぱちりとひらいた。
「……あぁ」
息ひとつ、それだけでわかる。熱に侵されたその身が欲してやまなかったものにめぐり逢えて、細胞の端々までもが歓んでいることが。
「慧玲様のお薬は、やさしい、ですね」
白菜、大根の葉と、柔らかい葉物をかみながら小鈴は微笑した。
白澤の手に掛かれば、ありふれた食材が最良の薬となる。
「効能だけではなく、口あたりも。患者の負担にならないよう、細部にまで心が砕かれているのがわかります」
再度検温したところ、熱が落ちついてきていた。ひとまずは安堵できそうだ。
「涼拌小菜は三日分ほど漬けておいたので、食事がとれるときに少量ずつでも御召しあがりくださいね。あとは水分補給を心がけて、そうですね、額に濡れた
小鈴の看病は黄葉にまかせ、慧玲は藍星と一緒に宿舎を後にする。
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