102毒の皇太子きたる
宮廷の
奉麒殿は宮廷で最も大規模な
招集したのは
「一昨日未明に
「
新たな皇帝はどうなるのかという疑念は、宮殿に集まっている重鎮たちの頭にも重く横たわっている。
「暫くは
皇后の背後から
「ですが」
欣華皇后の言葉に場が静まりかえる。
「雕皇帝には嫡嗣がおられます」
廷臣がざわめいた。
「失礼ながら、ご
「ええ、すでに
人の垣が
促されるでもなく、凄まじい畏怖を本能で感じて後ろに退ったのだ。
銀が施された紫の絹に袖を通した鴆は、いっさいの毒を隠さず、誇るように振りまいていた。
なかには鴆が宮廷風水師だと知る者もいたが、別人のような威圧感に身が竦み、声をかけることすらできなかった。
鴆は嘲るように全員を睥睨する。
彼はさながら、毒の嵐だった。
(鴆、なぜ――)
皇帝の倚子に興味などないと語っていたのは嘘だったのか。それとも怨嗟の飢渇を満たされず、皇帝になることで補おうと考えたのか。
あるいは。
鴆は視線を察して、振りかえる。
(なにか、思惑があるの)
紫と緑の視線が交錯する。
睨みあったのは一瞬。
鴆は慧玲に背をむけ、欣華皇后のもとに赴く。
腰から提げた玉佩の珠を奏でながら、彼は進んでいった。
事態を受けいれられず、廷臣たちが静かな恐慌に陥るなか、鴆と皇后だけが不穏な微笑を湛えていた。
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