96 毒師の失踪に風吹く後宮
風水師の失踪は宮廷を騒がせたが、
ただ、風水師たちが慌ただしく後宮を訪れては風むき等を観測していた。
おそらくは
(何週間も逢わない時なんてざらにあったのに)
年配の風水師たちとすれ違いながら、
鴆は毒師の暗殺者だ。危険人物が後宮からいなくなったのならば安堵してしかるべきなのに、胸のなかには風が吹いていた。
「どうかしましたか、慧玲様」
「ああ、なんでもありません。ちょっとばかり、毒のことを考えていただけですよ」
眉を曇らせる
「藍星は明朝から帰郷ですか」
「十日程ほど、
皇后から賜った報酬をまとめて、藍星にあげたことを想いだす。
「あなたにはそれに値する働きをしていただいていますから。ほんとうはもっと、その働きに報いられるものがあればいいのだけど」
「わわっ、もったいない御言葉です」
藍星は頭をさげてから、あの、と真剣な声をだす。
「……慧玲様が失踪された時のことなんですけど、誰に誘拐されたのか、ほんとは解かっておられるんじゃないですか」
「さあ、どうでしょうね」
緑の袖を振って、慧玲は瞳を細めた。
「わかりましたよ。慧玲様に喋ってもいいと想っていただけるまで、私は誠意をもっておつかえし続けますから。……いつかは教えてくださいね」
宮廷の使者が橋を渡って、駈け寄ってきた。
「
「承知いたしました」
皇帝の身になにかあったのだろうか。
土の毒は解毒できたはずだ。だが、日蝕から
(でも、ご不調ならば、直ちにと命じられるはず)
嵐の予感をはらんだ旋風だ。霜のついた枯れ葉が吹きあがる。葉の群は毒の蝶みたいにきりきり舞いをして、落ちた。
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