82 盤古経を紐解く
昼には
今朝は早朝から、後宮のあちらこちらで祈祷の声が響いていた。
いよいよに
冬の宮の廻廊を渡っていた
「
丁重に
「
「ほほ、
懐かしきかなと
「思慮ぶかく、
椿でも落ちるようにこぼされた言葉が、
(ああ、想いだした)
彼女の父親は微笑んだとき、頬にえくぼができるのだ。
慧玲は先帝が壊れてから、彼の顔を想いだすことができなくなった。彼女のなかに強く刻まれた先帝の姿は、眼もなく鼻もなく耳もない
だが、そうか。
彼は、
「
だからこそ、慧玲は悔しかった。彼が毒を盛られ、毒に敗けたことが。
胸が張り裂けそうになった。だがとうに終わったことだ。
(そう想わなければ)
薬であり続けることは、できない。
「時に麒麟といえば、そちは
「…………《
思索の海に落ちこみかけていた
「左様。ならば知っておろう。なにゆえに麒麟が帝族の護り神として奉られているのか」
昏い思考を振りきるため、慧玲は神話の
「
梅に芍薬に芙蓉と、
「
《
「地に降りた
続いては、
鳳凰は天を統べ、麒麟は
「
慧玲が
「左様。その後はこう続く――時、
「
「さすがは
感心したように
「鳳凰と麒麟は同じものだが、天が先に産まれ、後から
「麒麟が死に絶えれば、その魂は天に
皓梟妃はやはり、麒麟は死んだものだと考えて、調査を進めているのだ。
しかしながら、鳳凰か。織物に描かれる
この身に宿る《毒を喰らう毒》は孔雀の刺青となって、表に現れる。だが、あれが孔雀ではなく、鳳の紋様だったとすれば、麒麟の骸に触れてから毒の効かない体質になった事と繋がるのではないか。
皓梟妃はなにかを察したのか、瞳の端を綻ばせる。
「ふむ。なにかあれば、
羽根で織られた
皓梟妃と喋っているあいだは遠く聞こえていた祭の喧騒が、再び押し寄せてきた。
解からないことばかりだが、確かなことがひとつ。
(ああ、この地は、ほんとうに麒麟のいない国になってしまったのね)
とうに解っていた喪失があらためて、胸に落ちてきた。重く。
心の底が抜けそうなほどに。
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