81 四八珍の薬
「して、皇帝陛下の
診察を終え、皇帝の
「土の毒に相違ございません。薬種がそろえば直ちに調薬し、解毒することができます」
だが、
大陸各地の貿易商を総括する
「解かった。必要なものがあれば、申せ。
要不要を一瞬で振り分けて、明瞭な声で順に暗唱する。
「まずは
書記官が竹簡に書きとめていった。
「続けて
「待て、聞き覚えのない
「
「ふうむ、
「
「最後に
「
「左様です。緑に紅に青と、
毒のある物と薬になる物は、かたちがきわめて似ていることもある。そんな時に誤認することがないよう、
「続いては
「こちらは漢方ばかりだな。して、
「東の島にある、
「ほお、さながら白澤の叡智のようだな。了解した。それでは海路をつかって、隊商にむかわせよう」
職事官はすぐに貿易船の手配を命じた。
「最後は
書記官がぎょっとした。
医官たちも揃って顔を
「
「誤解されやすいのですが、
「締めて、
慧玲がここで言葉を濁らせる。
「果たして、得られるかどうか」
「尚書省の威信をかけて、なんであろうと調達する」
職事官にうながされ、慧玲は腹を括った。
「――――
場が騒めいた。
「貴様、死んだ麒麟がいるとでもいいたいのか」
「無礼にも程がある」
高官たちが揃って非難の声をあげる。慧玲は努めて冷静に「白澤の書に記された薬種を御伝えしたまでで他意はございません。ご寛容頂きますよう」といった。職事官は終始落ちついていたが、それでも眉を曇らせる。
「他の物では補えぬのか」
喧騒を割って制するように
廻廊のさきから姿を現したのは、女官を引き連れた
「薬を造るのに、なにが必要なの?」
堅物の高官たちでさえ皇后の清純な微笑には視線を奪われる。後宮にはより華やかな妃嬪もいるが、皇后からは魂まで魅了する美妙な風情が漂っていた。誰もが
「いやはや、皇后陛下の御耳にいれるようなことでは」
「麒麟の骨だったかしら。それならば捜さずとも、ここにあるわ」
高官たちが顔を見あわせる。皇后は女官に命じ、青銅の箱を取りにいかせた。
「帝族が受けつぐ
箱をあけると、神聖な香があふれだした。
なかには、竜を想わせる
(これは――本物だ)
実際に麒麟を視たことのある慧玲には瞬時に解かる。
(でも、解せない)
慧玲が先帝から教わったかぎりでは、帝族の
最も不可解なのは骨が真新しかったことだ。帝族が継承し続けてきたというには経てきた時が感じられない。古い骨は黄ばむ。風化して一部が崩れることもある。
この骨は奇麗すぎた。
(昨年、
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