80 皇帝倒れる
蝕まれた日は時を経て、空に還ってきた。
だが、異様なる
孔雀の
「
日蝕があった翌朝、
いわく皇帝が
宮廷の
宮廷に踏みいるなど、いつ振りだろうか――
華やかな後宮とは違い、宮廷は重厚な調度で飾りつけられ、帝が君臨するにふさわしく調えられていた。壁から
宮廷に先帝を毒したものがいるのだと考えるだけで、瞳の底で焔が燃えるのを感じた。だが、
(「
日蝕で
(いけない。今はよけいなことは考えず、皇帝陛下の御身だけを考えなければ)
慧玲は無理やりに思考を絶つ。これまでもそうしてきたように。
皇帝の
廻廊では高位の典医たちが身を縮ませ、うつむいていた。
「
皇帝は
(角だ)
皇帝の額からは、角としか言い様のない異物が伸びていた。
枝わかれしたそれは鹿を想わせるが、慧玲の頭に真っ先に浮かんだのは別のものだった。
(
「……陽に異変が現れたであろう」
皇帝は息絶え絶えだった。
「時を同じくして、頭が割れるように痛みだし、額にこのようなものができた。白澤の叡智をもってすれば、これが如何なる毒か、解けるであろう」
「左様でございます、陛下。まずは脈を取らせていただいても宜しいでしょうか」
脈拍は正常。打診をして
皇帝の角は他でもなく、硬い土の塊でできていた。
(これは、土の毒だ……なんてやっかいな)
あらゆる毒のなかでも最も難解で、強いのが土の毒だ。
なぜならば、土は万物の根幹だからである。水脈、木脈、金脈は土の底に張りめぐらされ、火もまた燃えつきれば土に還るものだ。
皇帝は命ずる。
「よいか、
慧玲は額づいて、
「誓って、御恩に報います」
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